2023年12月13日(水)
主張
医療・介護報酬改定
現場の声聞き大幅引き上げを
2024年度は公的医療保険の診療報酬、介護保険の報酬、障害福祉サービス等の報酬の改定額を同時に決める「トリプル改定」の年です。三つの報酬はサービスを受ける際の公定価格として政府予算の中で定め、患者・利用者が原則一部を負担します。医療・介護・福祉の事業所や施設の収入に充てられる報酬の改定は、サービスの質や担い手の労働条件などを大きく左右します。コロナ禍とそれに続く物価高騰で医療・介護・福祉の現場は疲弊したままです。切実な要求であるケア労働での賃上げを実現するためにも、報酬の大幅引き上げが必要です。
コストカットの矛盾集中
コロナ対応に尽力した医療分野では、資材の高騰や離職者の増加で存続の危機に直面しているところがうまれています。介護・福祉分野でも低賃金で慢性的な人材不足により事業の撤退に追い込まれる施設も相次いでいます。
危機的状況は、社会保障費を削減する長年の「コストカット」の政治がもたらしたものです。社会保障財源には、企業が負担する社会保険料が含まれます。経団連など財界はそれをカットするため、医療や介護の給付費削減を要求し続けました。コロナ禍で国民が必要な医療が受けられず、命の危険にさらされたのも余裕のない体制にされたことによる弊害です。
その反省に立つなら、今度の報酬改定で大幅なプラス改定が欠かせません。ケア労働を他の産業の賃金より抑え込んできた政策の根本的な転換が急務です。
ところが財務省や財界は、診療報酬引き下げを求めています。財務省は診療所は利益を上げているなどと主張しますが、これはコロナ対応で発熱外来やワクチン接種などへの財政支援を含んだ一時的なものです。コロナ前との比較では収益は減っているとされます。コロナ対応で奮闘した医療機関の努力にこたえず、報酬削減を持ち出すことに道理はありません。
報酬を上げれば国民負担増になると言いますが、後期高齢者医療制度の窓口負担2倍化や、介護施設の食費・部屋代の負担増を繰り返し、患者・利用者を苦しめているのは政府です。報酬アップで負担増につながらないために窓口負担引き下げなどが不可欠です。
報酬改定と一体で医療・介護の「効率化」などを口実に国民の負担増や保険給付の改悪が計画されていることも重大です。急性期病床の削減や、必要な医療を回数により制限し、一部の薬を保険適用外にすることで、医療の取り上げ、患者負担増が狙われています。
介護利用料の2割負担の対象拡大や、老人保健施設の相部屋(多床室)の有料化なども強行しようとしています。保険料を負担した国民が、必要な医療や介護などを利用できなくなる事態は「国家的詐欺」と言わざるを得ません。報酬引き上げのたたかいと合わせ、医療・介護の制度改悪を阻むたたかいをさらに広げましょう。
経済の好循環につなげよ
日本は欧州諸国と比べ、国内総生産(GDP)に対する社会保障費支出の割合が大きく下回っています。医療・介護・福祉で国庫負担を大幅に増やし、国民全体が安心できる体制をつくることが求められます。賃上げと処遇改善をすすめて購買力を高めることは、経済の好循環にもつながります。








