2023年12月12日(火)
主張
世界人権宣言75年
発展の歩みをさらに進めよう
1948年12月10日、第3回国連総会で世界人権宣言が採択されて75年がたちました。二つの世界大戦への反省から、国連憲章は加盟国の主権平等とともに、人権と基本的自由の尊重を第1条で掲げました。世界人権宣言は、憲章の理念を実現するために達成すべき基準を定めた権利章典です。
以来、人権保障の流れは国際的な規模で着実に発展してきました。その一方、ガザ地区やウクライナをはじめ各地で人権が踏みにじられています。反戦平和の運動と一体に、人権を守るたたかいの前進がいっそう切実な課題となっています。
促進はすべての国の義務
宣言は第1条で「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とにおいて平等である」と、高らかにうたいあげました。
第2条は、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見、出身など、どんな理由によっても人は差別されず、宣言が掲げた権利と自由を享受できると明記しました。民族や国籍の別を理由にした迫害はなくさなければなりません。
保障されるべき人権の内容は、66年の国連総会で採択された国際人権規約によって、法的拘束力を持つ条約として規定されました。
93年の世界人権会議で採択されたウィーン宣言は、人権と基本的自由の促進、保護が「政治的、経済的、文化的体制のいかんを問わず、国の義務である」と、その普遍性を明確にしました。国家が、政治体制の違いを理由にして人権抑圧を正当化することは今日の世界で許されません。
今、ジェンダー平等を求める巨大なうねりが、新しい時代を切り開いています。男女賃金格差の完全な解消、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス&ライツ(性と生殖に関する健康と権利)、同性婚の法制化、性的マイノリティーへの差別禁止などの運動が国際的に連帯し、政治を動かしつつあります。
米国で起きた白人警察官による黒人市民殺害を機に、植民地支配と奴隷制度の責任を過去にさかのぼって究明し、謝罪を求める動きが広がっていることも重要です。
人権と基本的自由は、各国の人民による、粘り強い運動によって、国際的な規範となってきました。その過程は容易なものではなく、弾圧によって多くの人が犠牲になりました。
2023年のノーベル平和賞はイランの人権活動家ナルゲス・モハンマディさんが受賞しました。同国の女性抑圧に抵抗してきたことが授賞理由です。
圧政と戦争は裏表の関係
モハンマディさんはイラン当局に「反国家的宣伝」の罪を着せられ、ノルウェー・ノーベル委員会によると、13回逮捕されました。五つの有罪判決で合計禁錮31年の刑を受け、獄中でたたかい続けています。10日にオスロで行われた授賞式にも出席できず、家族が受賞スピーチの原稿を代読しました。その中で「圧政と戦争はコインの裏表だ」とし、人権が全世界で保障されなければ、平和は実現できないと強調しました。
日本の男女賃金格差、在留外国人への人権侵害、過去の侵略戦争と植民地支配への無反省は世界の流れに逆らうものです。直ちに正されなければなりません。








