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2023年12月3日(日)

笹子トンネル事故11年

原因究明に背向ける中日本

「追加調査せず」社長断言 遺族「絶対諦めない」

追悼式典

 山梨県の中央自動車道・笹子トンネルで天井板が崩落した事故(2012年)から11年がたった2日、犠牲者9人を追悼する式典が同県大月市でありました。遺族が中日本高速道路に説明責任を求めたことに対し、小室俊二社長は「追加調査する予定はない」と断言。幕引きを急ぐ同社の姿勢が明らかになりました。(矢野昌弘)

国交省の責任問う

 「事故の報道に接する度に犠牲者や遺族の悲しみ、無念を思い浮かべる。これは遺族にしかわからない。だから、同じ悲しみを味わう人を出したくない」

 式典でそう述べたのは亡くなった松本玲さん=(当時28)=の父、松本邦夫さん(72)です。

 松本さんは「国土交通省は監督官庁でありながら、遺族に何らの説明もしてこなかった。今年8月末に社長から事故の説明があったが、新しい情報はどこにもなかった」と、国交省と中日本の双方の責任に言及。第三者委員会による原因究明を求めています。

 中日本はこれまで、事故から2カ月後にまとめた「安全性向上に向けた取組み」とする同社の文書と、国交省の調査・検討委員会の報告書の2文書で遺族に説明してきました。

 式典後の会見で松本さんは、この文書を手に「(原因にふれたと思われる記述は)わずか2ページと6行。こんな具体性のない調査で何がわかるんだ」。

 亡くなった石川友梨さん=(当時28)=の父、石川信一さん(74)は「中日本内部に(原因究明を)期待してもなかなか実現しない。第三者委員会を大いに期待する。絶対に諦めません」と話しました。

 参列した堂故茂国交副大臣は第三者委員会について「ご遺族の気持ちを聞いたので、持ち帰り勉強したい」と会見でのべました。

 小室社長は「遺族にも理解をいただけたと思っている。追加的な調査をする予定はない」と発言。第三者委員会については、文書を有識者に見せ助言を得たことなどを理由に、第三者委員会は不要との考えを示しました。

 犠牲者の森重之さん=(当時27)=の父、森和之さん(72)は「日本の行政は犠牲者が出ないと動かない。次の犠牲者が出るまで待つわけにいかない。この事故がきっかけになれば」と語りました。


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