2023年11月17日(金)
主張
ガザ病院攻撃
いかなる理由でも許されない
パレスチナ自治区ガザで最大規模のシファ病院にイスラエル軍の地上部隊が突入し、戦闘を開始しました。多数の死傷者が出ています。医療機関への武力攻撃は、国際人道法に違反する戦争犯罪です。イスラエルは無法な攻撃を直ちに中止すべきです。
国際人道法違反の蛮行
戦時での文民保護のルールを定めたジュネーブ第4条約(文民保護条約)は「文民病院は、いかなる場合にも、攻撃してはならず、常に紛争当事国の尊重および保護を受ける」と規定しています。
イスラエルは病院がハマスの軍事拠点に使われていると主張し、攻撃を正当化しようとしています。入院患者や病院職員、新生児の命を奪う攻撃はいかなる理由でも許されない蛮行です。
世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長が「病院は戦場ではない。シファ病院へのイスラエル軍突入はまったく容認できない」と非難したのは当然です。
イスラム組織ハマスとの戦闘開始後直ちに、イスラエルはガザ地区への空爆を始め、病院や難民キャンプまで攻撃しています。病院の電力確保に欠かせない燃料の供給も遮断しました。
WHOによると、ガザ地区にある36の病院のうち22が機能停止に追い込まれています。戦闘開始から36日間で患者や職員521人が犠牲になりました。
人工呼吸器や透析装置、保育器が動かなくなり、埋葬できない遺体がそのままになっていると伝えられます。攻撃で負傷した市民の治療も妨げられています。
シファ病院の医師は、病院内で戦闘が起き、イスラエル軍の戦車が侵入してきたと訴えています。外から狙撃されるため、窓に近づくこともできないといいます。院内には空爆から避難してきた人を含め数千人がとどまっているとされます。集団的な虐殺の危機が迫っています。
国際社会は攻撃停止を実現するために全力をあげなければなりません。ハマスは人質にとった民間人を直ちに解放すべきです。
イスラエルのネタニヤフ首相が、ハマスとの戦闘終結後は「イスラエル軍が治安を管理する」とし、ガザ地区やその一部の占領を示唆していることは容認できません。
ガザ地区は1967年の第3次中東戦争でイスラエルが占領しました。同年、国連安全保障理事会は同地を含めてイスラエルが占領した地域からの撤退を求めた決議を採択しました。イスラエルはようやく2005年にガザから撤退しました。再占領は安保理決議違反です。
国際社会は行動を急げ
安保理は15日、イスラエルとハマス双方に戦闘の「人道的な一時中断」を求めた決議を採択しました。この問題で初めての安保理決議です。
これ以前に安保理に提出された4本の決議案は常任理事国が拒否権を行使して否決され、10月27日に国連総会が人道的休戦を求めた決議を採択しました。今回は米英ロ3カ国が棄権し、拒否権は使いませんでした。
ガザでは刻一刻と、多くの命が奪われています。イスラエルによる攻撃の即時中止、即時停戦に向けた双方の交渉実現に向け、国際社会が一致した行動を急がなければなりません。