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2023年11月12日(日)

きょうの潮流

 〈秋来(き)ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる〉。三十六歌仙のひとり、藤原敏行の一首です。まだ暑い盛りの立秋のころ、風音のかすかな変化に秋の兆しを見つけた喜びを歌っています▼いまNHKEテレの「100分de名著」で『古今和歌集』がとりあげられています。平安時代、今から千百年以上も前に編まれた最初の勅撰(ちょくせん)和歌集。収められた千をこえる和歌の、じつに3分の1が四季折々の歌だといいます▼めぐる季節の微妙な移ろいを敏感にとらえ、あるいは予感してきた歌人たち。なかでも秋を詠んだ作品が最も多く、それだけ心動かす風物が豊かなのかもしれません。和歌によって育まれ、共有された季節感は私たちのくらしの中にも生きています▼今年は霜月に入っても暑い日が続き、27・5度を記録した東京都心では100年ぶりに11月の最高気温を更新。年間の夏日も最多となり、1年の4割を夏が占めることに▼これから一気に寒くなり、近年は春と秋が短くなったとの気象予報士の指摘もあります。そこはかとない四季の変化も失われていくのか。もっとも異常な高温は世界でも。観測史上最も暑い年になると▼「和歌とは、人の心を種として、それがさまざまな言(こと)の葉となったもの」。古今集の序文「仮名序」につづられています。生きる中で見聞きし、経験したことからわきあがってくる思いを、三十一(みそひと)文字に込めてきた先人たち。こんな世でありたいという人びとの願いや希望は、今に続いています。


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