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2023年11月10日(金)

ガザ侵攻正当化のG7共同声明

問われる議長国・日本の責任

 8日発表された主要7カ国(G7)外相会合の共同声明はイスラエルの「自衛権」を明記し、同国によるパレスチナ・ガザ地区侵攻を正当化しました。イスラエル支援を鮮明にする米国に追随し、停戦に向けた主導性を何ら発揮できなかった議長国・日本の責任が問われます。(竹下岳)


 「G7として初めて、今回の事態について一致したメッセージを出すことができた。重要な成果だ」。上川陽子外相は8日の記者会見でこう誇り、共同声明の概要を説明しました。その説明から抜け落ちていたのが、イスラエルの「自衛権」です。しかも、和文仮訳では、該当箇所を「自国及び自国民を守るイスラエルの権利」という、回りくどい表現に換えています。

 共同声明でイスラエルの「自衛権」を明記したことは、日本もガザ侵攻に正当性を与えたことを意味します。そうした印象を持たれることを、極力避けようとしている意図が透けて見えます。

 その理由は、原油の9割を中東に依存しているという立場上、日本は特定の軍事行動に肩入れせず、イスラエルとパレスチナ双方に自制を促すなど、独自の中東外交を展開してきた従来の立場と相いれないからです。本来なら、日本は停戦に向けた主導性を発揮すべきでした。

 ところが上川氏はイスラム武装勢力ハマスによるイスラエル攻撃から5日後、同国のコーエン外相と電話会談し、「イスラエルが国際法に従って自国及び自国民を守る権利を有することは当然である」と表明。10月27日、国連総会で加盟国121カ国の賛成で採択された、ガザ地区の戦闘の「人道的休戦」を求める決議にも棄権しました。

 今回の共同声明でも、「停戦」は除外されました。「人道的中断」(Humanitarian pauses)が盛り込まれましたが、これは民間人の避難や人道物資の搬入のため、戦闘の「小休止」を求めているにすぎません。

 日本政府のこうした姿勢の背景にあるのは、今回の事態が発生した当初からイスラエル支援の立場を鮮明にし、停戦に真っ向から反対している米国への追随です。上川氏は7日の日米外相会談で、ブリンケン国務長官に対して、「イスラエル・パレスチナ問題に対する米国の外交努力への最大限の支持」を表明しました。

 日本政府はこれまで、米国が起こしてきた戦争に一度も反対してきませんでしたが、これでは米国が支持する戦争にさえ反対できなくなってしまいます。

 中東諸国の多くの人々は、日本が世界で唯一の戦争被爆国であり、戦争の惨禍を知っているからこそ、自分たちの苦しみを理解してくれるという期待を持っています。その思いを裏切るべきではありません。


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