2023年11月9日(木)
きょうの潮流
どんな思いで、あの会見を聞いただろうか。洗脳された親から強いられた信仰。多額の献金による困窮や家族の崩壊、そして抱え続ける生きづらさ。子どもの頃から自由を奪われ生き方を選べなかった信者二世たちは▼世界中の財を、サタンのもとから神のもとに戻す「万物復帰」。統一協会への献金はそう教えられ、信者は「善行」と信じ込む。近年は先祖のうらみを解く「先祖解怨(かいおん)」という献金の手法もあります(本紙社会部取材班『信者二世たちの叫び』)▼文科省の解散命令請求を受けて記者会見した統一協会。献金問題について、田中富広会長は元信者や二世らに「心からおわびする」と。しかしそれは謝罪ではないとして、協会の責任を認めず、請求についても「到底受け入れることはできない」と居直りました▼謝罪ではないおわびがあるのか。「指導が行き渡っていなかった」と信者に責任をなすりつけるのか。被害者と向き合わず国にお金を預けてなんとかしてくれというのか―▼不信や怒りは増すばかり。しかも最大100億円の供託金といいますが、被害対策弁護団によれば被害額は推計で1200億円にも。莫大(ばくだい)な財産を隠す恐れも指摘されるなか、財産保全が急がれます▼「統一協会の被害は金銭だけでなく、人格や人生そのものに及びます」。脱会者で信者二世を支援する牧師が本紙で語っていました。世間の目をごまかすためのパフォーマンス―被害者の苦しみに背を向けるカルト集団に注がれる目はいっそう厳しい。








