2023年11月3日(金)
ガザの惨状伝え続けるジャーナリスト
妻と子、孫まで犠牲に
「悲しみと決意のはざまで」
【カイロ=秋山豊】パレスチナ自治区ガザでは、記者やその家族もイスラエル軍の無差別空爆で殺害されています。命の危険にさらされ、家族を失ってもなお、住民の苦難とガザの惨状を報じ続けるジャーナリストがいます。
カタールの衛星テレビ局アルジャジーラのワエル・アルダハドゥー・ガザ支局長が10月31日、本紙の電話取材に応じました。同氏の妻と15歳の息子、7歳の娘、1歳の孫が空爆で殺されたことは世界中に報じられました。「自分の家族の死がニュースになってしまった。悲しみと喪失感、ジャーナリストとしての決意と誇りのはざまで矛盾した感情を抱いている」と語りました。
アルダハドゥー氏は10月25日、空爆の様子を放送している最中、家族のいる中部ヌセイラット難民キャンプが空爆されたと知らせを受けました。家族はイスラエルが住民に退避を勧告した北部ガザ市から避難先を求めて転々とした後、同キャンプにたどりついたばかりでした。
アルダハドゥー氏は「PRESS(報道)」と書かれたベストを着たまま病院に駆けつけ、遺体となった息子の顔に手をふれ、白い布に包まれた娘を抱きました。息子の夢は父と同じ記者になることでした。
家族の埋葬後すぐに現場に戻ったアルダハドゥー氏。「泣いている時間はない。ここで起きていることを知る権利が人々にはある。家族とガザの人びとの死が、イスラエルの犯罪を世界に伝え続けなければならないという思いにさせる」と語りました。
多くのジャーナリストが空爆で命を奪われています。サラム・ミイマさんは北部ジャバリヤ難民キャンプの家が空爆され、数日後にガレキの下から遺体で発見されました。
サルマ・モヘイマさんは南部ラファで爆撃されて子どもと一緒に死亡。ヤセル・アブナモウスさんは南部ハンユニスの家にいる時に空爆されました。
ヨルダン川西岸のパレスチナ・ジャーナリスト組合ナセル・アブバクル代表は「ガザの記者たちは空爆と戦車の砲撃のなか、命の危険にさらされても取材を続けている。ガザの記者からジャーナリズムを奪い、真実を隠すことはできない」と語りました。








