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2023年11月1日(水)

沖縄・辺野古代執行訴訟 判決期日示さず

民意・対話 訴えた知事

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(写真)福岡高裁那覇支部に向かうデニー知事=30日、那覇市

 沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設に向け、国が提起した「代執行」訴訟は30日、福岡高裁那覇支部で口頭弁論が行われ、即日結審しました。対等・協力が前提の国と地方自治体との関係において、国が沖縄県の権限を奪い、自ら辺野古の設計変更を承認する代執行は、「本来あってはならない最終手段」(県弁護団)です。司法には、年内にも埋め立て工事の着工を狙う国の意向に隷属するのではなく、地方自治の本旨にのっとり、慎重な判断が求められます。

民意

 地方自治法第245条の8は、代執行の要件として、(1)県が法令に違反し、職務を怠っている(2)他の方法で是正が困難(3)著しく公益を害することは明らか―の3点をあげています。県は、いずれの要件も満たしておらず、代執行は成り立たないと主張。玉城デニー知事は口頭弁論での意見陳述で「民意」と「対話」を強調しました。

 弁論に先立って提出された県の答弁書は、辺野古新基地問題の原点は1995年9月の少女暴行事件であり、過重な基地負担に苦しむ県民は、2014年以来、3度にわたる県知事選や19年の県民投票で普天間基地の県内移設=新基地建設に反対の民意を示してきたことを強調。さらに、こうした民意の根源には、県民の4人に1人が亡くなった沖縄戦の経験、続く米軍の占領支配、本土復帰後も日本政府による基地負担の押し付けと、それに伴う基地被害が続いてきた現実があると指摘しています。

 知事は陳述で、「辺野古新基地建設問題に反対する多くの県民の民意が『公益』とされなければならない」と強調し、こうした民意を踏みにじらないよう強く求めました。

対話

 もう一つは、対話による解決です。答弁書は、県は国との対話を繰り返し求め、総務省の第三者機関である「国地方係争処理委員会」も16年6月、国と県が「真摯(しんし)に協議を行う」よう求めています。しかし、国は対話による解決をことごとく拒否してきました。その背景には、第2次安倍政権以来の、「辺野古が唯一」という政府の姿勢があります。知事は「あらゆる紛争を解決するための基本的な方法としての対話は、憲法の基本原理である民主主義の理念からも極めて重要」だと訴え、対話を拒否したまま、代執行を強行することは「到底認められない」と訴えました。

注目

 福岡高裁那覇支部は、理を尽くした県側の陳述にもかかわらず、わずか37分で結審しました。一方、県側は、判決期日を示さなかった点は意外だったとの見方を示しています。辺野古をめぐり、国言いなりになってきた司法が一定の理性を示すのか、あるいはさらに堕(お)ちていくのか、判決が注目されます。

 (竹下岳)

「代執行」訴訟の経緯

 防衛省沖縄防衛局は2020年4月、辺野古埋め立て区域北側の大浦湾に広大な軟弱地盤が確認されたとして、県に設計変更を申請。玉城デニー知事は21年11月、公有水面埋立法の要件を満たしていないとして不承認に。国側はこれを不服として、県の不承認を取り消す裁決と是正の指示を出しました。県は提訴しましたが、今年9月4日、最高裁は県の上告を棄却。判決を踏まえ、国は代執行に向けた訴訟を提起しました。国が勝訴すれば職務執行命令を出し、県が応じなければ代執行に踏み切ります。

 ただ、大浦湾側には過去の施工実績70メートルを超える、最深90メートルにおよぶ軟弱地盤や大量の土砂調達、7万本もの砂杭など難工事が待ち受けており、予定通り進む見通しは立っていません。


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