しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2023年11月1日(水)

主張

辺野古代執行訴訟

「公益」侵害しているのは国だ

 沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設で、埋め立て予定海域にある軟弱地盤の改良工事を追加する設計変更について、不承認を貫いている玉城デニー知事の権限を奪い、所管の斉藤鉄夫国土交通相が代わりに承認する「代執行」に向けた訴訟の第1回口頭弁論が福岡高裁那覇支部で開かれ、即日結審しました。デニー知事は意見陳述で「沖縄県の自主性、自立性を侵害することとなる国の代執行は到底容認できない」と訴えました。

国の対話放棄許されない

 沖縄県の米軍普天間基地(宜野湾市)の「移設」を口実にした辺野古新基地建設では、大浦湾にある埋め立て予定海域に軟弱地盤が存在することが判明し、防衛省沖縄防衛局が地盤改良のための設計変更を申請しています。しかし、デニー知事は公有水面埋立法に基づき災害防止や環境保全対策が不十分として不承認にしました。

 岸田文雄政権は埋め立て工事強行のため行政不服審査法の乱用などさまざまな手法で知事の不承認処分に介入してきました。国交相が今回提起した訴訟は「地方公共団体の処分権限を国が奪うという地方自治に対する最終的な介入手段である代執行にまで至ろう」(知事の意見陳述)とするものです。

 これまで国が地方自治体の事務を代執行した例はないとされています。県は設計変更が申請される前から対話による問題解決を国に幾度となく求めてきましたが、国は一貫して拒否してきました。知事が法廷で「対話によって解決を図る方法を放棄して、代執行に至ろうとすることは到底認められない」と述べたのは当然です。

 今回の訴訟の大きな争点は知事の不承認が「著しく公益を侵害している」という代執行手続きの要件を満たしているかどうかです。

 デニー知事は憲法が定める地方自治の本旨などから「県民の民意こそが『公益』として認められなければならない」と訴えました。

 知事は、▽県民は沖縄戦で本土防衛のための防波堤として筆舌に尽くし難い犠牲を強いられた▽戦後も米軍の施政権下に置かれ、銃剣とブルドーザーによる土地の強制接収を経て広大な米軍基地に囲まれることになり、基地があるが故のあらゆる被害にさらされてきた▽本土復帰後も基地被害は後を絶たず、過重な基地負担を課されている―と指摘しました。

 その上で、国は米軍基地の抜本的な被害軽減のための外交交渉を行わず県外移設の選択肢を排除してきたとし、「このような国の姿勢をみてきたからこそ、県民は辺野古新基地建設に反対している」と力説しました。「公益」を著しく侵害しているのは、新基地を県民に押し付ける国に他なりません。

普天間の危険性除去せず

 国は、普天間基地の危険性の早期除去を「公益」とし、唯一の解決方法が辺野古新基地だと主張しています。しかし設計変更が承認されても米軍の運用開始までに12年かかるとされます。軟弱地盤の改良は難工事で、新たな環境保全措置が必要となる可能性もあり、一層大幅な遅延も見込まれます。「その間、普天間飛行場は固定化されることになり、何ら早期の危険性除去にはつながらない」(知事の意見陳述)のは明白です。

 裁判所は、代執行という国家権力で「公益」である民意を踏みにじることを許してはなりません。


pageup