2023年10月30日(月)
主張
食料自給率の向上
農政の根本転換は国民的課題
世界的な食料危機を受けて国民の食料供給への不安が高まる中、岸田文雄政権は食料・農業・農村基本法を見直し、来年の国会に改定案を提出するとしています。
検討されている改定の方向は、農業を衰退させた従来型政策の枠内にとどまり、深刻な現状を打開するものではありません。
際限なき輸入自由化の末
地球規模の異常気象、ロシアのウクライナ侵略、コロナ禍などは、食料の6割以上を外国に依存する日本の危うさを浮き彫りにしました。農業と農村は担い手の減少が加速し、耕作放棄が広がるなど歴史的危機に陥っています。
歴代自民党政府が食料は外国から安く手に入れればいいとして輸入自由化を際限なく進め、国内農業を切り捨てる政治を続けた結果です。いま求められているのは基本方向を大本から切り替え、農業の再生、食料自給率の向上を国政の柱に位置付けた取り組みです。
農林水産省の審議会が9月に公表した法改定に向けた「最終取りまとめ」は、自給率低下の原因の検証や行き詰まった農政への反省は一切ありません。自給率だけでは捉えきれない問題があるなどとして、あれこれの指標の一つに格下げする方向を示しています。
麦や大豆など海外依存度の高い品目の増産に言及しますが、外国産を野放しのままでは達成困難です。しかも現実には麦や大豆などの生産維持に欠かせない水田活用交付金の削減を進めています。
米や乳製品についても輸入を続け、農家に減産を強いる施策を改めようとしていません。
農家の切実な要求である「再生産可能な適正価格の実現」についても、「関係者の理解醸成」「協議の場の設置」を強調するだけです。欧米諸国並みの価格保障や所得補償の実施など政府の責任で農業経営を支える抜本的対策をとろうとはしていません。
これでは農業者の苦境は増すばかりです。農業と農村が疲弊し、国民への食料の安定供給が脅かされるのは必至です。
政府は、食料の輸入途絶などの「不測時」に生産者に作付け転換や増産を命令し、価格統制や流通規制を行える法整備も検討しています。平素から農業の成り立つ条件を奪い、離農や耕作放棄を放置しておきながら、「有事」を口実にこのような「対策」を考えるのは本末転倒です。農業者には受け入れがたいやり方です。
野村哲郎前農水相は米農家に芋を作れと言っても聞いてくれないので法律で明確にしたいと記者会見で述べています(5月23日)。食料の有事法制の検討は、岸田政権の戦時体制づくりの一環です。
安心の営農へ条件整備を
国民の食料の安全保障のためには平素から食料を国内で確保する最大限の努力が必要です。農業の市場任せを転換し、農業者が安心して営農に励める条件を整えることは政府の責任です。削減され続けた農業予算の抜本的増額が不可欠です。それこそが、国民一人ひとりに食料についての権利を保障する土台です。
日本共産党国会議員団は8月、食料自給率の向上を国政の柱に据えて、農政の基本方向を抜本的に転換することを岸田政権に申し入れました。農と食料の危機打開は国民的課題です。政治を変えるために力を合わせましょう。








