2023年10月28日(土)
きょうの潮流
星条旗の縞(しま)模様が伸びてアラブの民衆に絡みつく。米国とイスラエルの戦闘機が組み合ったひもから、爆弾が落ちていく―▼パレスチナに生まれ、風刺漫画を描き続けたナージー・アル・アリーの作品です。1987年に暗殺された彼の絵には、後ろ手に立ちつくす少年「ハンダラ」が書き込まれています。故郷を追われ難民となった子どもの視線を通してイスラエル占領下の残酷さ、私腹を肥やす支配層や米国の偽善的なふるまいを映し出しました▼いままた、この地でくり返される虐殺。停戦を求める声が世界で広がるなか、大国の思惑が弊害になっています。とくに米国はイスラエルへの賛意や軍事支援を露骨に示しています▼以前から米国は中東地域を重視してきました。石油や天然ガスの安定供給の確保、敵対勢力による地域支配の阻止、大量破壊兵器の拡散と反テロ攻撃の防止。それらが国益にかなうと▼イスラエルを特別扱いしてきた背景には、米国内で活動する親イスラエル・ロビー団体の存在があると指摘されています。民主、共和の二大政党議員に巨額の資金を融通するなど政界に強い影響を持ち、米政府のイスラエル寄りの姿勢を支えています。日本は双方に関係を築いてきながら、岸田政権は米国に付き従い、イスラエルの非道なガザ攻撃を批判できません▼成長することを許されなかった「ハンダラ」。パレスチナの人びとの存在意義と抵抗の象徴となった後ろ姿はいまも訴え続けています。私たちができることは何かを。








