2023年10月28日(土)
自衛隊「常設統合司令部」 元高官ら証言
出発点は米側要求
米軍指揮下になる恐れ
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防衛省は2024年度予算の概算要求に、陸海空自衛隊の実動部隊を一元的に指揮する「常設統合司令部」(約240人)の創設を盛り込み、「米インド太平洋軍司令部と調整する機能」のためだと初めて明記しました。ハワイに拠点を置くインド太平洋軍はインド太平洋地域で全軍の指揮権を有する統合軍です。日本共産党の志位和夫委員長は25日の衆院本会議で、「インド太平洋軍の指揮のもとに、自衛隊が事実上組み込まれることを意味するのではないか」と告発しました。
岸田文雄首相は答弁で、常設統合司令部の創設は「自衛隊の統合運用の実効性を強化するため」であり、「自衛隊が米軍の指揮下に入ることはない」と否定しました。
しかし、防衛省は既に06年3月、陸海空自衛隊を束ねる統合幕僚監部を設置。統合幕僚長が防衛大臣を一元的に補佐し、米軍との調整に当たる「統合運用」体制が確立しています。その上、なぜ屋上屋を重ねるような常設統合司令部が必要なのか。首相はその理由をいっさい説明していませんが、出発点は米側の要求であることが、自衛隊元高官の証言で裏付けられています。
河野克俊元統合幕僚長は18年7月、都内での講演で、米太平洋軍(現・インド太平洋軍)のハリス司令官から、「統合幕僚長は私のカウンターパートナーではない。あなたのカウンターパートナーは(ワシントンの)統合参謀本部議長だ。自衛隊にも(太平洋軍司令官のカウンターパートになる)常設統合司令官が必要ではないか」と言われ、英軍やオーストラリア軍の常設統合司令部を参考にするよう「助言」を受け、研究を開始したと明らかにしました。(『トモダチ作戦の最前線』)
また、磯部晃一元統合幕僚副長は「武力攻撃事態」などで統合幕僚長が統合参謀本部、インド太平洋軍、在日米軍の3司令官と同時に調整を行うのは不可能であり、常設統合司令部の創設は、「運用面で日米同盟の実効性を向上させる」ための「喫緊の課題」だと指摘しています(国際問題研究所『安全保障政策のボトムアップレビュー』)。米軍の運用に合わせて自衛隊の司令部機能を変えるべきだという主張です。
今年1月の日米安全保障協議委員会(2プラス2)共同発表は、日米の「統合」を繰り返し強調し、米国は常設統合司令部設置の決定を「歓迎」すると明記。「より効果的な指揮・統制関係を検討する」としています。この点一つを見ても、「自衛隊が米軍の指揮下に入ることはない」という首相の答弁は説得力を欠きます。









