2023年10月27日(金)
きょうの潮流
最初にぶつかる壁は家庭。誰よりも守ってくれるはずの親が自分を否定する相手となる。周りに理解されない悲しみや苦痛は、学校でも、社会に出てからも続く▼生まれながらにして割り当てられた性別。女の子は女の子らしく、男の子は男の子らしく生きることを強いる集団。そのなかで自身が認識する性との違いに苦しみ、いじめや差別を受け、さまざまな場で性別を問われなくてはならない人たちがいます▼「意思に反して体を傷つけられない自由を制約しており、手術を受けるか、戸籍上の性別変更を断念するかという過酷な二者択一を迫っている」。戸籍上の性別を変更するには、生殖能力をなくす手術を受ける必要があるとする法律の要件について、最高裁判所の大法廷が違憲の決定を出しました▼個人の尊重を定めた憲法13条に反するとして、裁判官全員が一致。この要件が人権侵害にあたるとした国連機関や欧州人権裁判所をはじめ、国際的な流れとも合致しています。他の要件も見直しが急がれます▼自己決定に基づいて性別のあり方を決められ、法的にも認められることは、世界的にも人権の一部として認識されています。逆に、多様な性や少数者の権利をないがしろにしては個人を軽んじる不寛容な社会をつくりだすことにならないか▼今回の決定に「やっと自分をとり戻せる」と喜ぶ当事者も。誰もが自分らしさを手に入れることができる社会をつくりたい。そうした声と運動が、一歩ずつ世界を変え、豊かにしていきます。








