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2023年10月25日(水)

きょうの潮流

 実りの秋。木々は色づき、植物のとりどりの果実が森を彩ります。それは生き物たちの命をつなぎ、森の豊かさを保ちます▼この時期、クマは1年の80%ものカロリーを摂取するそうです。栄養価が高く主要なエサとされるブナの実もその一つですが、東北地方では今年ほとんど実がつかない大凶作。エサを求めて人里に近づき、各地で住民が襲われています▼国が統計をとりはじめて以降、被害は最多に。人の生活圏内に連日出没していることから、国や自治体などが注意喚起と対策を呼びかけています。環境省もクマの実態調査に乗り出しましたが、遅きに失した感があります▼クマの生態をから研究してきた小池伸介さんは「人間との関係で大事なのは、クマを森から出さないこと」だといいます。もっとクマを知り、山林の管理を怠らず、野生動物と人里をしっかり分ける。日々の地道な努力しかないと(『ある日、森の中でクマさんのウンコに出会ったら』)▼国土の3分の2に及ぶ森林大国日本。しかしいま、里山や農村は廃れ、クマと人のくらしの境目はあいまいになり、シカの急増などで森の風景が一変してしまったと小池さん。長年、森の管理・保全を放置してきた国の姿勢が問われます▼植物の種を森のあちこちにまきちらすクマのふんは、豊かな森をつくるうえで欠かせない役割を果たしています。目の前にある危険への対処とともに、多様な生物のゆりかごとなっている森をつないでいく役割が、人間にはあるはずです。


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