2023年10月24日(火)
岸田首相の所信表明演説
危険な時代へ危険な“におい”
「日本国民が『明日は今日より良くなる』と信じられる時代を実現する」―。岸田文雄首相は所信表明演説でこう胸を張りました。しかし、そこで並べられたメニューは、今まで失敗してきた政策の延長ばかりで、目新しさはありません。そればかりか、国民の暮らしと安全がさらに壊される危険な時代へと連れていかれる危険な“におい”も随所にちりばめられています。自らの政権の延命のために、ひたすら強い者に付き従う岸田首相の政治手法の行き詰まりは鮮明です。
「経済、経済、経済、何よりも経済に重点を置いていく」―。岸田首相が、これでもかというほど連呼した「経済」。岸田首相は「変化の流れをつかみ取る」といいますが、本当に「流れ」をつかめているとは思えません。
日本経済の停滞は、岸田首相が「この30年間、日本経済はコストカット最優先の対応を続けてきた」と認めるように、新自由主義政策を推し進めてきた結果、つくられたものです。自公政権が大企業いいなりに、非正規化の拡大で賃金を抑制し、税と社会保障による所得再分配機能を壊してきた構造自体にメスを入れなければ、岸田首相がいう「新たな経済ステージへの移行」などできるはずがありません。
ところが、岸田首相は、「供給力の強化」などといって企業減税を中心に、これまで通りのメニューを並べるだけ。大企業支援をいくらしても、内部留保が拡大するだけで、「持続的な賃上げ」が起こらないことは、すでに経験済みです。岸田首相がいう「国民への還元」も、具体策は与党に「早急な検討を指示する」と丸投げしただけ。“付け焼き刃”のような「減税」では焼け石に水で、その後には軍事費2倍化の財源確保のための増税が課される計画が控えています。
一方で、岸田首相が、強引に進めているのが米軍とともに戦争する国づくりへの体制強化です。岸田首相は「自衛隊の統合運用の実効性をさらに高め、日米同盟の抑止力・対処力を一層強化する」と表明。米軍の指揮下で自衛隊が敵基地攻撃能力を使って参戦する危険な道を具体化しようとしています。戦争で真っ先に犠牲となるのは、力の弱い人々です。イスラエル軍のパレスチナ自治区ガザへの空爆に見られるように、暴力が向かう先は、軍事的標的だけにかぎりません。暴力で解決できる政治課題がどこにあるというのでしょうか。
岸田政権発足から2年がたちましたが、大企業と米国の言いなり政治はますますひどくなっています。政治を国民の手に取り戻すことが必要です。岸田首相のもとで失われた政治の信頼を取り戻すためにも、新しい政治の姿を示す論戦こそ求められます。
(国会取材団キャップ 佐藤高志)








