2023年10月23日(月)
主張
万博建設費の膨張
中止をきっぱり決断すべきだ
2025年開催予定の大阪・関西万博の会場建設費が2350億円に膨れ上がる見通しが示されました。日本国際博覧会協会(万博協会)が20日、国、大阪府・市、経済界の3者に報告しました。当初見積もられていた1250億円の約1・9倍です。建設費は3者で等分に負担することを取り決めています。国と府・市の公費支出が増えることは国民と住民の負担増に直結する大問題です。経費がこの額に収まる保証はありません。国民に多大な負担を強いる大阪・関西万博の道理のなさが改めて浮き彫りになっています。中止をきっぱり決断する時です。
当初見積もりの1.9倍
会場建設費は20年12月にも、建物の設計変更などを理由に当初の見積もりから600億円引き上げられ1850億円に達していました。さらに500億円も上乗せされることになります。
今回の増額について万博協会は、資材高騰や人件費が増えたなどと説明しています。資材の価格はこれからも大幅な値上がりが予想されています。あくまで開催するというなら、今後もなし崩し的に費用が膨張しかねません。
もともと大阪・関西万博の開催予定地である大阪市の人工島・夢洲(ゆめしま)は地盤が軟弱で、地盤沈下のおそれもあります。土壌に汚染物質が含まれており、対策費用もばく大です。関連する交通インフラ整備などを含めると総費用は1兆円を超えます。国を挙げた事業だからと予算膨張に歯止めがかからない状況は21年の東京五輪を想起させます。
世論は万博費用の増額に批判を強めています。14~15日に行われた共同通信社の世論調査では、建設費増額による国民負担増は「納得できない」が75.6%に上りました。「毎日」16日付は「規模を縮小して、費用を削減」が42%で「万博をやめるべきだ」との答えも35%ありました。国や大阪府・市は、これらの声に真剣に耳を傾けるべきです。大阪維新の会代表の吉村洋文府知事には「万博は維新が掲げる『身を切る改革』の例外なのか」(「朝日」1日付)との声が上がっています。
岸田文雄政権は大阪・関西万博を国策と位置づけ、推し進める姿勢です。8月31日に官邸で開いた万博に関する関係者会合では、「オールジャパン一丸となって成功に向けてラストスパートをする決意」を表明しています。今回の建設費増についても政府は追認する方向です。20日に開会した臨時国会に提出する補正予算案に増額の一部を盛り込む方針です。
物価高騰で国民の暮らしが苦しい中で、万博に巨額な税金を投じることは予算の使い方として間違っています。
カジノとともに止めよう
パビリオン建設の遅れを取り戻すため、万博工事を時間外労働の上限規制の対象外にする動きもあり、違法な長時間労働が労働者に強いられる危険があります。命と安全を置き去りにすることは、万博の理念と相いれません。
万博開催後の夢洲は、IR(カジノを中核とした統合型リゾート)の予定地となっています。万博の名による公費の投入がカジノのためのインフラ整備と深く結びついていることは重大です。万博もカジノもストップさせることが重要となっています。








