2023年10月22日(日)
きょうの潮流
虫が苦手で嫌いな人は多い。嫌いな虫の筆頭に挙げられるのがおそらくゴキブリかもしれません。嫌われるのは人間の生活空間に入ってくるからでしょうか▼奈良県の纏向(まきむく)遺跡で採取した古墳時代前期の土から、現在もビルなどで見かけるチャバネゴキブリの破片が発見されたと発表がありました。古墳時代前期とは3世紀後半。同種の世界最古の発見例かもしれないそうです▼同種はこれまでアフリカ北東部が原産とされていました。日本では貿易によって江戸時代末期ごろに入ってきたと推定されていました。研究チームは、他の遺跡の研究報告と合わせると、同種が古墳時代からすでに日本列島にいたと考えています▼国内には60種以上のゴキブリがいるとされ、うちビルや家に入る屋内種は10種ほど。今回とは別の屋内種が以前、宮崎県の本野原(もとのばる)遺跡の縄文土器(4300~4000年前)に残された痕跡から発見されています。中国南部が原産で、江戸時代に日本に入ってきたと考えられていたものです▼土器中の虫を研究する専門家は「それ以前から日本列島に存在した在来種であった可能性を示唆するもの」だといいます。4000年前の九州地方と中国南部の考古学的資料に人の往来を示す物的証拠がないからだと(『昆虫考古学』)▼どちらの屋内種も現在は外来種とされています。国内でどのように屋内種になっていったのかは、今後の研究課題です。当時の人々がこの虫とどう付き合っていたのか、とても興味のあるところです。








