2023年10月4日(水)
生活保護基準 戻せ
広島地裁判決受け 原告ら国に要請
物価高“裁判 長引かせないで”
国による生活保護費の基準引き下げは、生存権を保障した憲法に違反するとして、広島県内の利用者63人が国や自治体に処分取り消しを求めた訴訟の判決をうけ、原告らが3日、厚生労働省に要請しました。
![]() (写真)要請書を国に提出する原告と弁護団ら(左)=3日、衆院第1議員会館 |
広島地裁は2日、原告らの請求を認め、減額処分を取り消す判決を出しました。要請では、厚労省に対し各自治体に控訴しないよう指導し、引き下げ前の生活保護基準に戻すよう求めました。
要請後、衆院第1議員会館で原告らが会見しました。中村絹枝さん(79)は、9年に及ぶ裁判闘争にふれ、判決に「涙が出た」。香典が包めず葬儀にも出られない生活実態も、赤裸々に語ってきました。異常な物価高騰は暮らしをさらに圧迫しています。「どうやって生活しようかと。国はこれ以上、裁判を長引かせないで」と訴えました。
金広孝史さん(63)は、低すぎる生活保護費によって今夏はエアコンの利用もできませんでした。より安い店で食材を買い求める日々です。「裁判所は(私たちの主張を)認めてくれた」と語りました。
弁護団の津村健太郎団長は、生活保護利用者の生活実態に着目した判決であり、全国で今後つづく「判決の指針になる」と評価しました。
国は2013年~15年、「デフレ調整」などを基準に生活保護費を最大10%削減しました。広島地裁は2日、厚労相による引き下げを「裁量権の範囲を逸脱、または乱用するもの」として、提訴後に死亡した原告などを除く51人に対する減額処分を取り消しました。国の判断について「統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠く」として、生活保護法に違反していると判断しました。
同様の訴訟は全国29地裁で起こされ、判決は22件目。減額取り消しの一審判決は12件目です。11月30日、名古屋高裁で2件目の高裁判決が出る予定です。