2023年10月4日(水)
主張
札幌冬季五輪招致
是非を決める住民投票実施を
2030年と34年の冬季五輪の札幌市招致の是非を問う住民投票実施を求める直接請求署名が同市でスタートしました。
市民団体「札幌オリパラ住民投票を求める会」が9月28日に開始し、11月27日まで取り組みます。請求には有権者の50分の1以上が必要で同市では約3万4000人にあたります。同会は5万人を目標にしています。
署名提出後、市議会の議決を経る必要がありますが、五輪招致をめぐり住民投票が実施されれば、日本で初のケースとなり、今後の招致活動にも大きな意義を持つものです。
市民の批判は募るばかり
同市が招致を加速させたのは一昨年末でした。総経費3170億円、市の負担額は490億円と見込まれています。しかし当初から民意を反映した招致かどうかが問われてきました。
昨年3月、市は市民の意向調査を行いました。誘導的な質問内容が批判を浴びましたが、それでも賛成は52%にとどまりました。昨年末の地元メディアの世論調査では賛否が逆転し、反対が67%にも上っています。
背景にあるのは東京五輪の負の遺産です。大会経費が当初の約2倍に膨れるなど問題が噴出し、昨夏から相次ぎ発覚した汚職や談合事件が不信感をいっそう増大させました。
市は昨年末、「積極的な機運醸成活動」を一時休止しつつ、今夏に市民対話を再開しました。そこで寄せられた声の大半は「資材高騰で経費が増大するのではないか」「汚職が札幌で再発しない保証はあるのか」「五輪より除雪や学校のクーラー設置が先だ」など懸念や批判、反対でした。
暮らしを犠牲にする一方、五輪を“てこ”とした大型開発などの問題も指摘されています。
国際オリンピック委員会(IOC)は30年の開催地は、来夏までに決めるとし、今年中にも内定を出すとの報道もあります。
秋元克広市長は4月の市長選で「市民らの意向を確認した上で招致を目指す」としながら、住民の意向調査を先送りし、住民投票にも背を向け、公約をほごにしています。
招致は多くの公費を投じるなど市政の重要課題です。民意との乖離(かいり)を認識しつつ、突き進むことは民主主義に反します。
北海道新聞が社説で「市民の理解は得られず、意向調査もできずに行き詰まった。市は招致活動からの撤退を考える時に来ているのではないか」(9月19日付)と記したのは当然です。
同市には「まちづくりは、市民の参加により行われる」「市民が主体」と定めた「自治基本条例」があり、住民投票の実施も記されています。本来は市が率先し提起すべきものです。日本共産党は、その実施を求める条例案を議員提案するなど、一貫して民意に基づく市政運営を求めてきました。
合意ぬきはありえない
市民の合意なき五輪はありえません。IOC幹部も「事前に住民投票を行い、住民に了解を得た上で立候補を」と発言しています。近年、世界では招致の是非を住民投票で決める都市が増えています。決めるのは行政でなく市民です。札幌市も住民投票は避けて通れません。