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2023年10月4日(水)

きょうの潮流

 自然や生き物に関心をもち、土いじりが好きな少女でした。好奇心旺盛で一つのテーマを深く考え、よく調べて発表する。まるで一人前の学者のような小学生だったといいます▼ハンガリーの小さな町で育った彼女は、やがて科学者の道へ。しかし資金難で母国での研究がゆきづまり米国行きを決意。当時は外貨を自由に持ち出せなかったため、娘のテディベアのぬいぐるみに隠して出国したことは知られた話です▼今年のノーベル生理学・医学賞を授与されたカタリン・カリコさん。ヒトの体内に無数にある細胞の中で、たんぱく質をつくるための遺伝情報を伝える「メッセンジャーRNA(mRNA)」の研究を長く続けてきました▼これまで人工的に合成したmRNAを体内に入れると炎症反応を引き起こし、薬などに使うことは難しいとされてきました。カリコさんは、共同受賞した米ペンシルベニア大のワイスマン教授とともに、それを抑える方法を発見。新型コロナワクチンのスピード開発と実用化につなげました▼多くの困難にくじけず、たくさんの命を救った研究。短期の成果ばかりを重視し、基礎研究の基盤や環境を削ってきた日本で、こうした人材や研究を花開かせることができるだろうか▼『カタリン・カリコ』の著者でジャーナリストの増田ユリヤさんは、苦労を重ねてきた彼女を支えたのは、病気で苦しむ人びとを助けたいという固い信念だったと記しています。どんな賞や栄誉よりも、命を救う喜びに勝るものはないと。


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