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2023年10月1日(日)

主張

杉田氏の要職起用

自民の人権意識の欠落は重大

 自民党が、杉田水脈衆院議員を同党の環境部会長代理にする人事を決定しました。杉田氏は9月初め、アイヌの人たちなどを侮蔑した2016年のブログへの投稿が人権侵犯にあたると、札幌法務局から認定されたばかりです。国の機関から人権を侵したと指摘されたことは、国会議員を続ける資格そのものにかかわる大問題です。杉田氏による人権侵害・差別的な言動は数多くあります。同氏を要職に起用した自民党の人権意識の欠如はあまりに深刻です。

法務局が「侵犯」を認定

 札幌法務局が「人権侵犯の事実」を認定した杉田氏の投稿は、女性差別撤廃についての国連の会議に参加したアイヌや在日コリアンに対して「チマチョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさんまで登場。完全に品格に問題があります」などというものです。特定の民族や少数者を蔑視した、悪意に満ちた差別的な表現です。

 当事者の女性の救済申し立てに、同局は人権侵犯だと認め、アイヌ文化を学び発言を注意するように「啓発」を行いました。杉田氏は、啓発にどう向き合うのか、いまだコメントをしていません。

 自民党の茂木敏充幹事長は9月26日の記者会見で問われ、「そのような投稿があったことは残念だ」と述べたものの、次期衆院選で杉田氏を公認するかどうか問われると「資質などを踏まえ適切に判断したい」とごまかしました。

 杉田氏を厚遇した今回の人事は29日の自民党総務会で決めました。自民党の部会は、政府が国会に提出する法案の審査などを行い、政策分野ごとに設置されています。部会長代理は部会長に次ぐナンバー2のポストです。杉田氏は同党の環境問題などで発言力が大きくなる可能性があります。

 杉田氏の人権侵犯発言を免罪し、党の有力な担い手の1人と位置付けたことに他なりません。森山裕・党総務会長は「適材適所で進めている」と開き直りました。

 もともと杉田氏を衆院選で2度にわたって公認し、比例代表中国ブロックで当選させたのは、自民党です。同党には人権を守る姿勢が欠落していることをますます浮き彫りにしています。

 杉田氏は18年に月刊誌『新潮45』で、LGBTQなど性的少数者について「彼ら彼女らは子供を作らない、つまり『生産性』がない」と記述し、批判を浴びました。当時は自民党本部前で議員辞職を求める抗議行動もありました。

 岸田文雄首相は22年8月の内閣改造の際、杉田氏を総務政務官に登用しました。国会で野党議員から過去の言動を追及された杉田氏は、発言の一部を「謝罪し、取り消す」と述べたものの、根本的な反省を示さず12月末、総務政務官を辞職しました。

 杉田氏の過去の問題を知りながら「職責を果たす能力を持った人物」と評価し、擁護した首相にも批判が集まりました。

厚遇した責任が問われる

 岸田首相は9月19日の国連総会の演説で「人間の尊厳」を守る重要性を繰り返し訴えました。しかし、杉田氏を何度も重用する姿勢は、首相に人権や尊厳を語る資格があるのかを疑わせます。

 人権侵害と差別発言を改めようとしない国会議員に対し、毅然(きぜん)と対処できない自民党の政権担当能力が問われます。


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