2023年9月29日(金)
同門の兄弟弟子対決
手の内熟知 目の離せぬ展開に
将棋第54期新人王決勝戦 来月2日から
将棋の第54期新人王戦(しんぶん赤旗主催)の決勝三番勝負は、10月2日に大阪市の関西将棋会館で開幕します。決勝に進出したのは、藤本渚四段(18)と上野裕寿四段(20)。2人の棋風と、対戦の見どころを、本紙観戦記者の池田将之さんに聞きました。
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藤本四段と上野四段は、2人とも関西の棋士で、同じ井上慶太九段門下です。上野四段の方が2歳年上で、将棋のプロ棋士養成機関である奨励会に入会したのは1年早いという、とても近い兄弟弟子対決になります。
四段に昇段してプロ棋士になるのは、藤本四段が2022年10月1日で、上野四段よりちょうど1年早くなりました。
兄弟子である上野四段にすれば、四段昇段を先に越されたことについて、思うところはあろうかと察せられますし、プロ棋士になって初の対局が新人王戦決勝三番勝負の第1局ということで、相当気合が入っての対局となると予想されます。
練習将棋を数多く指しているはずで、互いに手の内を知り尽くした兄弟弟子対決ですので、相手の狙いをどう外すのか、または相手の狙いに乗っていくのか、序盤から目の離せない展開になると思います。
藤本四段は、現在最年少棋士で、このところものすごく勝っている新鋭です。奨励会の三段リーグをわずか2期で突破し、加古川青流戦でも決勝三番勝負に進出が決まっており、いまもっとも勢いのある若手の一人といえます。
新人王戦出場も、初出場での決勝進出です。
最近の若手に共通していることですが、序盤、中盤の研究が深く、終盤も強いという、スキのないタイプです。
今期新人王戦の3回戦の齊藤優希三段戦で、王手の連続を浴びながら、持ち時間がしっかりあるのに、スイスイ指し進めて正確に逃げ切り、勝利したのは印象的です。自分の読みによほど自信がなければできない芸当です。
居飛車党で、得意な戦法は、先手番なら相掛かり、後手番なら雁木(がんぎ)に組むことがほとんどです。
一方の上野四段は、小学校低学年のとき、井上慶太九段の将棋教室に来たころから知っています。私が講師の一人で、最初は「四枚落ち」で対局したのですが、そのころから筋がよく、「きっとプロになるだろうな」という予感がありました。
予感は的中し、中学生で奨励会三段となりましたが、三段リーグで少し足踏みをしていた印象です。
実は前回の奨励会三段リーグでも、最終対局日に、勝てば四段昇段が決まるというときに、負けて、昇段を逃していました。その経験も生かして、たくましくなったのかなと思います。
新人王戦は4期連続4回目の出場で、51期は2勝、52期、53期は初戦敗退でしたが、今期は新人王戦優勝経験のある伊藤匠七段(第52期)、増田康宏七段(第47期、第48期)を破っての決勝進出です。「化けた」(急速に実力をつけて脱皮した)印象です。
棋風は、こちらも居飛車党で、先手番なら矢倉に組むことが多く、後手番なら相手に合わせて対応する印象です。
展開としては、じっくりした駒組みからの、重厚な将棋になるように思います。序盤から、細かくポイントを取り合って、互いにポイントを積み上げていくような好勝負を予想します。
決勝三番勝負の日程
第1局 10月2日(月)
第2局 10月23日(月)
第3局 10月31日(火)
いずれも対局場所は大阪市・関西将棋会館。(いずれも対局開始は午前10時)