2023年9月25日(月)
きょうの潮流
東京・練馬区の牧野記念庭園のあちらこちらにスエコザサが植栽されています。植物学者の牧野富太郎が妻・壽衛(すえ)への思いを込めて名付けたことが知られています▼NHKの連続テレビ小説「らんまん」も最終週。サブタイトルは「スエコザサ」です。富太郎をモデルに創造の世界を広げてきました。時代の制約をものともせず、植物研究に没頭して自由闊達(かったつ)だった主人公の万太郎。その生き方はまさに「天真らんまん」です。妻の寿恵子は万太郎の“冒険”に伴走します▼ドラマには、興味深いエピソードがちりばめられています。たとえばイチジクの一種、オーギョーチの命名のいきさつ。1896年、万太郎は調査で台湾へ。国の利益のための調査ではなく、ありのままの台湾の植物を見て来たいと▼見つけた新種に台湾の言葉で学名をつけます。当時、台湾は日本の統治下にあり、日本語を共通語として押し付けていました。国に逆らう気かと警告されますが、万太郎は意に介しません▼神社の森の植物が失われていくことに心痛めて、国が推し進める神社合祀(ごうし)令に反対する姿も印象的に描かれました。戦争へと向かう時代。作者の長田育恵さんが本紙のインタビューで語っていた「万太郎の思想」を垣間見る思いです▼植物を「この子」と呼び、「雑草いう草はないき」「草花に優劣はない」を信条に、誰にも平等に接した万太郎。数々の印象深い言葉を刻んだ物語の行く末は…。長田さんがキーワードは「継承」という、その顛末(てんまつ)に注目です。








