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2023年9月19日(火)

警報出ていれば

リビア洪水 当局対応に批判

 【カイロ=秋山豊】暴風雨によるダム決壊で洪水被害を受けたリビアで、当局が警報を出していれば、これほど多くの人命は奪われなかったとの批判が出ています。本紙が電話取材で現地の声を聞きました。


 アファマド・マブロウクさん(51)=公務員=は「せめて妻と子どもたちの遺体を見つけたい」と嘆きました。被害が集中した都市デルナで被災しました。妻と子ども4人が行方不明です。

 リビア東部は10日に暴風雨の直撃を受け、二つのダムが決壊。下流の市街地に濁流が押し寄せ、マブロウクさんたちが暮らしていた4階建ての建物ものみ込まれました。

 彼は、子どもを助けようとしている間に失神し、気がついた時には全てが流されていたと言います。

 デルナのガイティ市長は、死者は2万人に上る可能性があると語っています。世界気象機関(WMO)は「警報があれば、事前の避難によって多くの犠牲を防げていただろう」と指摘しました。

 一方、ガイティ市長は「災害発生の3、4日前に個人的に避難を命じていた」と述べました。しかしマブロウクさんは「避難を指示した高官はいない。住民は家にいるよう言われた」と話します。

 治安当局は10日の夜から翌朝まで外出禁止令を出しました。水資源省も外出しないよう指示し、「ダムの状況は良好だ」と発表しました。

 他方、地域の水循環を研究する水文学者などはダムを修繕しなければ災害が発生する危険があると以前から警告してきました。当局が警告に適切に対応してこなかったことへの批判も出ています。

 リビアでは2011年、民衆蜂起後に北大西洋条約機構(NATO)が軍事介入し、カダフィ政権が崩壊しました。混乱が続き、14年以来、対立する政治勢力が国家を東西に分裂させ、それぞれ支配しています。

 先出のマブロウクさんは「紛争と混乱が続くなか、インフラ整備を怠り、ダムの決壊につながったことと、避難を呼びかけなかったことで多くの人びとが亡くなった」と嘆きます。「国民の要求を無視し、権力と利益ばかり求めてきた双方の支配勢力に対する大きな怒りがある」と語りました。


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