2023年9月19日(火)
きょうの潮流
壁画で有名な高松塚古墳など古墳群や宮跡などが密集し、田園地域が残る奈良県明日香村と橿原市。シリーズ「農と食 現場から」の企画で訪ねました▼近鉄吉野線沿いでは「古代ロマンの息吹感じられる、日本の原風景がここにある」など「飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群」の世界遺産登録をめざすキャンペーンが▼案内役は日本共産党明日香村議で、奈良県農民連会長の森本吉秀さんです。「“インスタ映え”する人気の観光スポットがあちこちにあります」。県農民連事務所近くの高台には、牽牛子塚(けんごしづか)古墳・越塚御門(こしつかごもん)古墳があり、周りの田んぼで稲穂が金色に輝き、秋の風情を感じさせます▼「ここは私が長年、無農薬で化学肥料を使わずに有機栽培しています」と森本さん。イノシシやシカの獣害対策のため細い電線で囲った場所もあります。田畑を維持・管理する森本さんら農業者の務めです▼最古の歌集『万葉集』で詠まれた“天の香具山”の麓・橿原市下八釣(しもやつり)町では、農薬や化学肥料を使わない有機農産物の学校給食活用を通じて地域農業を再生させる取り組みが始まっています。半農半Xの市民や女性も参加する「かしはらオーガニック」です。代表の山尾吉史さんは危機感を込めて話します。「農業の担い手が高齢化して、耕作放棄地が増えています。手をこまねいていられない」と▼古代ロマンに欠かせない田園風景を残すというなら行政が行うべきは農業振興です。遅くない将来、古くからの田園風景が消滅しないために。