2023年9月16日(土)
主張
マイナカード問題
国民に保有強いる政策やめよ
岸田文雄首相は改造内閣の発足にあたって、マイナンバーカードと健康保険証の一体化を促進するよう武見敬三厚生労働相に指示しました。マイナカードを担当する河野太郎デジタル相は留任です。組閣後の記者会見で首相は、マイナカードを巡る大混乱について一言も反省を述べませんでした。それどころか「国と地方の行財政の仕組みを変えていく」として河野氏を、新設する「デジタル行財政改革会議」の担当相に任じました。2024年秋の健康保険証廃止の中止・延期を求める世論に耳を貸さず、マイナカードの使途拡大に突き進もうとしています。
保険証廃止の方針変えず
武見氏は就任にあたっての記者会見で「マイナ保険証の利用促進」を強調しました。
マイナカードの誤ったひも付けについて政府は11月末を期限として総点検を進めています。
健康保険証を一体化したマイナカードを医療機関の窓口で提示しても、機械でカードを読み込めなかったり、医療費の負担割合が間違って表示されたりするトラブルが相次いでいます。マイナ保険証のシステムを導入した医療機関が「紙の保険証も持参してください」と呼びかけることが当たり前になっています。行政の現場では、証明書の誤発行や、公金を受け取る銀行口座の誤ったひも付けが続発しました。
マイナカードの交付数は9500万枚を超え、対象となる個人情報は数十億項目にのぼります。政府の総点検を巡っては、実際に点検業務を担う自治体から、膨大な作業を懸念する声が上がっています。
全国保険医団体連合会は、点検する被保険者情報は1億6000万件になり、期限までに終えることは不可能だとしています。
来年の保険証廃止に向けて無理な期限を設けても実効ある点検にならず、国民の不安は解消されません。マイナカードの運用そのものをいったん停止し、完全・確実な総点検を行う必要があります。
岸田政権は改造内閣でも、保険証の廃止と一体にマイナカードを全国民に持たせる方針を変えません。マイナカードの利用範囲をさらに拡大して行財政のデジタル化を推進する姿勢です。
河野氏はデジタル田園都市国家構想、規制改革、国家公務員制度も兼任します。地方自治の分野として市町村が自主的に行うべき「行財政改革」にまでデジタル相が関与していきます。早速、河野氏は14日の記者会見で「コロナで膨らんだ歳出の効率化を目指す」として、市町村財政にも口出しする考えを示しました。
批判に耳傾け誤り反省を
これまでも河野氏は「マイナンバーカードが普及して、マイナポータル(政府が運営するウェブサイト)を見る人が増えたからひも付けの誤りがわかった」と開き直ってきました。「自身の情報が誤っていないかどうか、マイナポータルで確認してほしい」と政府の失策の点検を国民に求める発言も繰り返してきました。
首相は河野氏の「持ち前の突破力に期待している」と述べましたが、デジタル化の担当相に求められるのは国民の批判に耳を傾け、誤りを反省する姿勢です。全国民にマイナカードを押し付ける「突破力」ではありません。








