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2023年9月7日(木)

酷暑の高校野球 急がれる変化

命守ることが最優先

 第105回全国高校野球選手権大会(甲子園球場、8月23日決勝)は厳しい暑さに見舞われました。夏季のスポーツ大会のあり方が改めて問われています。(山崎賢太)


 「全身がつったような状態になった選手も出た」。試合中、熱中症の疑いで選手が倒れたチームの監督はこう語りました。

 14日間の試合で24人の選手が熱中症の疑いで治療を受け、そのまま途中交代する例も少なくありませんでした。

 大会期間中、最高気温が30度を超える「真夏日」は13日、うち35度を超える「猛暑日」が8日もありました。日中のグラウンドは直射日光で土が熱をたくわえ、水分の蒸発により湿度を上げます。選手からは「内野は特に熱いなと感じた」という声も聞かれました。暑さが選手の体に大きなダメージを与えていたのは間違いありません。

 今年から五回終了後に10分間の「クーリングタイム」を導入。選手たちは冷房を効かせたベンチ裏の別室に移動し、氷のうなどで体を冷やし、理学療法士の指導でストレッチを行うなどしたものの、熱中症をなくすことはできませんでした。

観客も体調悪化

 応援する生徒やファンも、期間中に241人が熱中症の疑いで治療を受けたと発表されました。スタンド裏の通路や階段に座り込む人や、仮眠をとるように目を閉じ休む人が見られ、体調を崩した人は公表数以上だと考えられます。

 大会12日目の8月19日、直射日光の当たる一塁側アルプス席の気温を測ってみました。

 午前9時に32・7度だったのが同10時には35・2度。正午には38・0度とぐんぐん上昇していきました。コンクリートに塗装を施した床材や樹脂製のいすが日光で熱せられ、あたりの気温を上昇させていました。観客が密集し風の通りが悪いことも影響しているようです。

朝夕2部制議論

 熱中症は重度になると脳神経にダメージが残り、高次機能障害(記憶力や判断力の低下)、まひ、歩行機能障害などの後遺症を引き起こす可能性があります。来年以降も危険な状態で大会を続けていていいのか。

 今年2月、主催する日本高校野球連盟(高野連)などは朝夕2部制について議論しました。最も気温の上がる昼間を避け、朝と夕方から試合を開始するものです。

 気温を計測した19日を見ると、午後4時には一塁、三塁アルプスともに32度台に下がり、直射日光も弱まることから危険性はかなり下がることが予想されます。午前6時半から2試合、午後4時から2試合行うと、午後8時半に日程を終えることができます。

 2部制は今夏の導入も検討されましたが、高野連などは運営や観客に影響が出るなどの理由で「現状では難しい」と見送っています。

 甲子園球場から近い京セラドーム(大阪市西区)を活用する複数会場案も考えられます。ドームなら昼間に試合をしても安全性を確保できます。

 運営方法を大きく変えられない背景に、テレビ放送などの商業的な思惑があります。しかし、選手や生徒の健康・命を守ることが最優先です。高野連には、競技団体として決断する責任があります。


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