2023年9月4日(月)
関東大震災100周年シンポ「何が市民を虐殺に駆り立てたのか」
事実を究明することで歴史修正主義を止める
![]() (写真)講演する渡辺延志さん=2日、東京都内 |
2日、東京の在日韓人歴史資料館で関東大震災100周年を記念し、「何が市民を虐殺に駆り立てたのか」をテーマにシンポジウムが開かれました。
同館館長の李成市(リ・ソンシ)・早稲田大学名誉教授は冒頭のあいさつで、2010年以降、大震災時の朝鮮人などの虐殺を否定する動きが強まっていることに懸念を表明。
横浜市議会で自民党議員が中学社会科副読本の「虐殺」という言葉を問題視、「殺害」に変えられる▽都立横網町公園の追悼碑にある犠牲者数を自民党議員が都議会で問題にし碑の撤去を求める▽ハーバード大学のラムザイヤー教授が東大の支援も受け、震災当時の新聞報道をもとに、虐殺を招いた流言は実体のないものではなかったなどとする論文を発表―などの事例をあげ、「国際的な力も借りた歴史修正主義を押しとどめるために、当時の資料を発掘し事実を究明すること、さらに、災害時に簡単にデマを信じ虐殺に走り、しかも罪の意識がないという異常事態を、当時の状況からどのように理解できるかの視点を提供することで、未来に向けた信頼関係を築きたい」とのべました。
「なぜためらいなく人を殺すことができたのか」という疑問から長年、朝鮮人虐殺問題を研究してきたジャーナリストの渡辺延志(のぶゆき)さんは、「武装した朝鮮人が集団で襲ってくる」というのが流言の核心だったと強調。
日本人が朝鮮人に恐怖を抱き流言を信じた背景に、戦時における体験があったと指摘。▽朝鮮の農民が圧政に対して蜂起した東学農民戦争(1894、95年)に日本は軍隊を送り3万~5万の農民を殺りく▽日本の植民地支配に抗した朝鮮の義兵戦争(1906~15年)での殺りく▽間島(かんとう)での抵抗運動を鎮圧・虐殺(20年)▽シベリア出兵、ことに朝鮮人を含むパルチザンによって700人以上の日本人が皆殺しにされた尼港事件(20年)の経験―などがあり、「不逞(ふてい)鮮人」「朝鮮人パルチザン」を追うことが日本軍の日常活動となり、日本人に「不逞鮮人」への恐怖と敵対心が広がっていたと指摘しました。
韓国近代史研究者の裵姈美(ベ・ヨンミ)さんは「そうした戦争を通じて、日本に反抗する朝鮮人は殺してもいいという考えが軍隊の中に公式化され、それを経験した兵士によって民衆に持ち込まれた」とのべました。
戸辺秀明・東京経済大学教授は、市民を虐殺に駆り立てた要因として当時の日本社会が徴兵制がある社会=人を殺せる人間がいた社会だったと指摘。くわえて尼港事件などを通じて、日本の民衆の中に自分たちが被害者だという意識があり、自己防衛・正当防衛意識が殺りくへの倫理的止め金を外したと語りました。









