2023年9月3日(日)
きょうの潮流
「いまここから川にとびこんだら、どうなるんだろう」。絵本『橋の上で』で、自死を考えていた少年は出会った男性にこういわれます。「耳をぎゅうっとふさいでごらん」▼昨年の児童生徒の自殺は514人と過去最多でした。10代の死因第1位です。夏休み明けの9月に増加するといわれます。どうしたら止められるのか―。多くの人々が心を砕き、発信してきました▼自死をやめた人の物語がそれを抑止する「パパゲーノ効果」という仮説があります。タレントの中川翔子さんは10代のころ、「死にたい」と思い続けましたが、ネコをなでることで死に向かう気持ちが変わることもあったと▼厚労省は「ゲートキーパー(命の門番)になろう」とホームページで呼びかけます。その役割は「変化に気づく」「じっくりと耳を傾ける」「支援先につなげる」「温かく見守る」の四つ。「死にたい」「消えたい」などのネガティブな気持ちを含め、話を否定しないことが大切、と。「つらかったんだね」「よかったら聞かせて」と苦しい思いを聞く―。耳の傾け方がサイトで丁寧に書かれています▼教師がゲートキーパーになることで、一人でも多くの子どもを救える可能性が高まります。とはいえ1クラス40人近くの子どもたちを見て、多忙を極める教師たちにとって、子どもの悩みに気づくことは、ハードルが高い▼少人数学級にして、教師を増やすこと。過度な競争教育をやめること。命を守るためにも、子どもの心を大切にする社会が不可欠です。








