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2023年9月1日(金)

主張

関東大震災100年

教訓に学び災害に強い国土を

 10万5千人以上が犠牲となった関東大震災発生からきょうで100年です。1世紀の節目に、甚大な被害を出した東京都や横浜市など各地で惨状を伝える企画が催されています。デマの流布で多くの朝鮮人、中国人らを虐殺した事実を告発し、責任を問う取り組みもあります。

 おびただしい命を奪った巨大地震の悲劇を繰り返さないために何が必要か―地震と無縁の地域がない日本にとって切実な課題です。首都直下地震や南海トラフの巨大地震などへの警戒を一層強める必要がある中、災害に強い地域と国土をつくることが求められます。

人口集中でリスク高まる

 関東大震災の犠牲者の9割が焼死でした。多くの家屋が倒壊し、昼食支度中などで発生した火災が低気圧の影響による強風によって広がったとされます。背景には、木造家屋を地域に密集して建てた当時の政府の無秩序な都市政策がありました。人口急増を進めながら防災の備えを欠いた政策が惨事を拡大したのです。

 住宅の耐震性・耐火性は進んできているものの、市街地の危険な住宅密集地は各地に残されています。1995年の阪神・淡路大震災でも住宅の焼失被害は深刻でした。地震時の火災対策強化は過去の課題ではありません。

 30階以上の高層ビルが林立する現状は100年前とは全く異なる新たなリスクです。高い階ほど揺れが大きい長周期地震動がもたらす被害が警告されています。エレベーター停止で取り残される人たちへの救援体制も万全ではありません。高層ビルの立地場所は液状化の可能性が高い埋め立て地が多いことも問題となっています。

 100年間で東京の人口が約400万人から約1400万人へとけた違いに増えました。都内に通勤・通学する人も含めるとさらに増加します。しかし、都市の巨大化に見合った防災・減災の仕組みは追い付いていないのが現実です。大量の被災者の避難場所や支援確保の仕組みをつくり、緊急時に機能するように点検・整備するのは政治の責任です。個人の自覚や意識任せでは対応できません。交通機関がストップすることで大量にうまれる「帰宅困難者」の支援の対策も必要です。

 関東大震災を長年研究してきた武村雅之氏(名古屋大学減災連携研究センター特任教授)は「富国強兵で街づくりを置き去りにして最悪の被害を出したかつての東京と、街を金もうけの道具として利用してきた現在の東京が重なって見えます」(本紙日曜版8月27日号)と警告します。災害に弱い都市をつくった「一極集中」政策を根本から改める時です。

災害多発国の政治の責任

 関東大震災で津波に襲われたり、大規模な土砂崩れがあったりした場所が市街地になっている危険を指摘する専門家は少なくありません。地域に存在するリスクを住民が正しく認識できるよう周知することは防災・減災の土台です。

 気象の激甚化で、過去の経験と異なる様相を示す災害もあるだけに、地域の変化に合わせて対策を常に見直し、実効性の伴うものにしていくことも欠かせません。

 9月1日を「防災の日」に定めたのは、関東大震災の教訓を忘れず、災害への備えを怠らないためです。多発する災害から国民を守る政治の役割が重要です。


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