2023年9月1日(金)
きょうの潮流
天地も覆さんばかりの凄(すさ)まじき大音響。烈風は瞬時にして横浜全市を焦土と化し数万の生霊と幾十億の財貨を奪った。余は幾多の迫害、飢餓、疲労と闘いつつ、累々たる死体の山を越え、撮影を完成した―▼震災直後のありさまを記録したカメラマンの語りです。その映像は11時59分を指した高島駅の時計から始まり、立ち上る猛煙や廃虚と化した街、避難する人々の姿をとらえています▼いま神奈川県立歴史博物館の関東大震災展で流されています。巨大地震と、それに伴う火災や土砂災害、津波によって未曽有の被害をもたらした震災から100年。実相と教訓をくみ取ろうとさまざまな催しが開かれています▼関東大震災は復興と都市計画づくりの原点といわれます。しかし災害に強い都市づくりは国の怠慢によって現在も課題を残して。「壊滅的な被害を生んだ原因は街づくりの大失敗」。本紙日曜版でそう指摘した専門家は、いまの政府や東京都のやり方に警鐘を鳴らしています▼忘れてならないのは、混乱と人心の不安のなかで起きた軍隊や警察、自警団による朝鮮人や中国人の虐殺です。新宿にある高麗博物館では数々の資料や証言を示しながら、隠されてきた実態を赤裸々に暴いています▼いまだに調べもせず、虐殺の事実さえ認めない日本政府。1世紀前の教訓からみえてくる国のあり方や責任はここにも。「過去をふり返りながら、現在に努力し、将来に希望を持つための契機となれば」。展示を企画したある学芸員の思いです。








