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2023年8月31日(木)

主張

ジャニーズ性加害

声上げた被害者を守る社会に

 ジャニーズ事務所の故ジャニー喜多川前社長による性加害問題を受けて事務所が設置した「再発防止特別チーム」が29日、性加害が長期間・広範に繰り返されていた事実を認めた報告書を公表しました。性加害を知りながら放置・隠蔽(いんぺい)した経営体質、「見て見ぬふり」の事務所の不作為などが被害を拡大させたと断じました。報告書には、多くの少年への許し難い性虐待の事実が記されており、被害の大きさは計り知れません。事務所は責任を認め、被害者に心から謝罪し、救済と補償、再発防止の仕組みをつくるべきです。

巧妙な罠でからめとる

 報告書は、「ジャニー氏の性加害の事実が1950年代から2010年代半ばまでの間にほぼ万遍なく存在していた」「少なく見積もっても数百人の被害者がいるという複数の証言が得られた」と明記しました。芸能事務所トップが自身の事務所に所属する中高生らの未成年のタレント候補に対し、強制わいせつ罪などに該当し得る犯罪行為を行い、多数の被害者を出した「極めて悪質な事件」と断定したのは当然です。

 報告書は、背景の一つに、ジャニー氏と姉の故メリー喜多川氏が長く社長などを務めた「同族経営」の弊害を挙げました。メリー氏については、ジャニー氏の性嗜好(しこう)異常と、それによる少年たちへの性虐待が続いていることを知りながら徹底的な隠蔽を図り、そのことが、被害の拡大を招いた最大の要因であるとしました。ジャニー氏が少年たちに合宿所などで継続的に性加害を続けてきたことをジャニーズ事務所は認識していたのに、何ら対応しないばかりか、辛抱させるしかないと考えていたふしがあり、それも被害を広げた大きな要因だったとしました。

 藤島ジュリー景子社長に対しては、取締役時代から性加害疑惑を認識していたにもかかわらず、社長就任後も調査を怠ったとして、辞任を求めました。

 報告書は、被害を潜在化させた「権力構造」に立ち入って言及しています。ジャニー氏は採用・デビューなどの生殺与奪権を一手に握り、タレント候補らに絶対的に強い立場にありました。一方的な強者・弱者の関係性の中では、芸能活動上の不利益・悪影響を避けるため性加害を受け入れざるを得なかったと報告書は述べます。

 子どもを手なずけ、言うとおりにすれば悪い事は起きないと思い込ませることで、自由意思で性加害に応じたように誘導するのは加害者の「常套(じょうとう)手段」です。報告書は、積極的にジャニー氏の自宅や合宿所に行くことを望んだ少年がいたとしても「ジャニー氏が仕掛けた巧妙な『罠(わな)』に絡めとられた結果」であり、「典型的な性虐待の図式」と指弾しました。

業界とメディアのあり方

 報告書は、有名プロデューサーらの力が強いエンターテインメント業界には性加害やセクシュアルハラスメントの発生しやすい土壌があるとも述べました。

 過去に複数の週刊誌が問題にしたにもかかわらず、今年3月の英国BBCの報道まで続いた「マスメディアの沈黙」がジャニーズ事務所の隠蔽体質を強化したとしました。重く受け止めなければならない指摘です。人権侵害を告発した人が守られ、被害から救われる社会にすることが必要です。


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