2023年8月30日(水)
きょうの潮流
演劇の甲子園とよばれる、全国高校総合文化祭(総文祭)の演劇部門。今夏の鹿児島大会で徳島県立城東高校の「21人いる!」が最優秀賞に輝きました。しのびよる戦争の暴力をじんわりと描いた出色の出来でした▼狭い地下室で活動している高校演劇部が舞台。男子上級生が一人、また一人と、命がけの「ボランティア」に指名されていきます。外では警報や爆発音が響き、ある日、女子部員も爆発に巻き込まれ…▼戦争という言葉はひと言も出さずに、地上で何が起きているかを感じ取らせる巧みな演出です。生き残った女子生徒は「死ぬならお花畑がいい」と語ります▼「誰も理不尽に巻き込まれない平和な世界というと、『頭の中、お花畑』と言われるやん。それでもいい。私はお花畑で死にたい」。後輩は答えます。「死なないで、お花畑で生きてほしい」と。目頭が熱くなる場面です▼戦争体験のない高校生たち。演出で出演もした3年生の浅野碧巴(あおとも)さんは「過去の経験を参考にしたというより、私たちがこれから経験するかもしれないこととして意識した」と語っていました。二度と戦争を経験することのないよう、あえて想像して見せた舞台でした▼城東高校は旧徳島高等女学校で、卒業生には作家の瀬戸内寂聴さんがいます。晩年まで戦争反対を訴え、車いすで国会前行動に参加した瀬戸内さん。後輩たちの快挙に目を細めていることでしょう。総文祭の優秀校による東京公演の模様は10月以降、ネット上でも配信される予定です。








