2023年8月28日(月)
主張
家事・育児の男女差
性別役割分担の固定化解消を
厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が2022年に実施した全国家庭動向調査の結果を22日公表しました。1日の平均家事時間は平日で妻が4時間7分、夫が47分でした。育児時間の1日平均は平日で妻が7時間34分、夫が1時間57分です。妻の家事・育児時間の割合は近年の調査では減る傾向を示しているものの、依然として8割を超える高水準です。主要国の中で、日本の家事・育児時間の男女差の広がりは際立っています。女性の社会進出を妨げ、子どもを産み育てることを困難にしている家庭での性別役割分担の固定化の解消は急務です。
各国の中でも極端な偏り
内閣府が今年6月に発表した「男女共同参画白書」は、諸外国でも男性の労働時間が長く、女性の家事・育児などの時間が長い傾向があるとしつつも、日本はその中でも分担のバランスが極端になっていることを記しています。
白書によれば、日本では女性の家事・育児時間の分担割合が84・6%にのぼりますが、ドイツは61・7%、カナダ60・2%です。日本の男性について時間で見た場合、1日の労働時間はドイツの男性の約1・6倍にもなっているのに対し、1日の家事・育児時間では、ドイツの男性の3分の1以下にとどまっています。
子育て期の女性の労働時間が短く、男性の労働時間が長いことは、平均帰宅時刻にも反映しています。独身期には平均帰宅時間に男女差はないのに、子育て期の有配偶女性は約7割が17時台以前に帰宅しています。一方、男性でみると子育て期の有配偶男性の平均帰宅時間が19時40分頃と一番遅くなっていました(同白書)。
男性に長時間労働を強いる働き方が、女性にライフスタイルの変更を迫り、夕方以降の家事・育児を1人で担わざるをえない深刻な現状です。
「男性は仕事」「女性は家庭」という性別役割分担は、女性労働者が企業の役職につくことへの障壁になっています。男女の賃金格差をつくる大きな要因でもあります。女性の賃金を低くすることで男性が「稼ぐ」中心とされ、女性に働くことより家事・育児をさらに求める―そんな構造を断ち切らなくてはなりません。
内閣府の昨年の調査では、“家事や育児などに女性がより多くの時間を費やしていることが職業生活で女性の活躍が進まない要因の一つ”との意見に同意する女性の回答が8割を超えています。男性でも「そう思う」などが7割以上です。変化を求める声を政治は真剣に受け止める時です。
「3重の足かせ」なくし
国連人口基金の今年の「世界人口白書」は、家庭内でのジェンダー不平等が家事と育児の負担を女性に一手に引き受けさせる弊害を挙げ、「職場でのジェンダー不平等、家庭でのジェンダー不平等、勤労者世帯への構造的支援(保育や育児休業など)の欠如という3重の足かせ」が「少子化が進む国の特徴」と述べています。女性を差別する「伝統的な家族観」が、出産についての女性の自己決定権を損ない、結果として少子化を進めている現状も指摘しています。
全ての人の権利と自由が保障され、家庭でも仕事でも希望が実現する社会にしていくことがいよいよ求められます。








