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2023年8月26日(土)

ビッグモーター社長辞任1カ月

保険会社競わせる構造

収益第一「持ちつ持たれつ」

損保出身の男性語る

 ビッグモーター(BM)の創業者、兼重宏行氏が社長を辞任して26日で1カ月がたちます。不正問題の背景に何があるのか、損害保険会社出身で長く大規模中古車販売店を担当してきた男性に聞きました。(遠藤寿人)


写真

(写真)都道沿いにあるビッグモーターの店舗(一部加工)

 BMは中古車販売業と自動車修理業を行っています。事故が起きると事故車のユーザーは、保険会社に連絡します。すると保険会社は修理先を確認または紹介します。この紹介先がBMです。BMは保険会社から事故車両の紹介を受けるメリットがあります。

 他方、BMは中古車販売を行うとともに保険の代理店でもあります。購入者は、自賠責保険(強制保険)と自動車保険(任意保険)に加入します。通常、どこの保険会社の保険にするかは販売店=BM=の紹介で決まります。

 BMは各保険会社に事故車の紹介件数を競わせ、件数に応じて保険を割り振っていたといわれます。この「競わせる構造」が問題の本質です。

「罰金」問題も

 2016年12月に発覚した社員への「罰金」問題でも、この「競わせる構造」が現れています。

 社内で自動車保険の月間販売目標が決められ、目標を達成できなかった店の店長から現金を集め、達成した店の店長へ“ご褒美”として分配していました。会社側は関与を否定しましたが、この制度の運用は会社主導だったことは明らかです。

 この時期の保険業界の大きな出来事は、同年5月、「改正保険業法」が施行されたことです。

 保険商品の複雑化や販売形態の多様化に対応するもので、(1)顧客に対する情報提供義務(2)顧客の意向把握・確認義務(3)保険募集人に対する体制整備義務―と保険募集の基本的なルールが創設されました。

 保険会社の役割は、保険代理店の適正な販売体制を指導・監督し監査することにあります。各損害保険会社は社員を保険代理店であるBMへ出向させていますが、その本来の目的は、BMの販売・管理体制づくりにありました。

 BMは社員への「罰金」問題の時、適正な販売・管理体制づくりが必要とされ、改善の取り組みが始まっていました。それがなぜこんなに悪くなってしまったのか。前社長の息子の前副社長が実権を握り目先の収益拡大に走った、それを周りももり立ててしまったことにあるのではないかと感じています。

 ここ数年の間に、BM内の保険業務の社員教育や販売・管理にあたる部門に20人いた要員が1人もいなくなりました。余計な部署に人を置くのはダメだという考えで削られました。

 損保から送りこまれた出向者も、本来の役割が置き去りにされ、BMの一社員として、店舗に配属されて保険販売業務を担いました。また、整備部門では出向者が、保険会社からの事故車の取り込みにあたるなど、目先の売り上げと収益拡大に走る「一兵卒」になってしまったのです。

構造を改めよ

 保険会社とBMが「持ちつ持たれつ」の一体でした。上位に立って適正な保険募集の指導・監督をすべき保険会社が、保険の契約獲得を優先し、BMに従属する関係に陥ってしまったのです。業界全体の収益第一主義の構造こそ改める必要があります。


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