2023年8月26日(土)
きょうの潮流
困っている人のためになりたい。希望と使命感を抱いて入った自衛隊。それは、すぐに打ち砕かれました。性加害と、それを隠ぺいしようとする男社会の巨大な組織によって▼複数の男性隊員からうけたセクハラをめぐり、自衛隊とたたかう覚悟を決めた五ノ井里奈さん。この間の経緯や何度も折れそうになった心のゆらぎが『声をあげて』につづられています▼その場にいながら、何もなかったとしらを切る隊員たち。味方だと思っていた女性幹部の手のひら返し。まじめに調べない警務隊に居眠りする書記。信頼していた組織への失意から延長コードを首に巻き付けたことも…▼立ち上がったのは閉ざされた組織の中で自分のようにつらい思いをしてほしくなかったから。実際、埋もれた声は多々あります。このほど公表された防衛省・自衛隊のハラスメント調査では、被害の申し出があったものだけで1325件。そのうちの6割超が内部の相談員や相談窓口を利用していませんでした▼理由は、改善が期待できない、相談できる雰囲気や環境ではない、信用できない。勇気をふるって口を開いてもまともに対応されなかったり逆に脅されたり。防衛省が設けた有識者会議でさえ、組織としての意識改革の必要性を求めています▼いまも身を削りながらの裁判がつづく五ノ井さん。本来の自分はよく笑い、面白そうなことに挑戦することが好きだといいます。「わたしは性犯罪の被害者としてではなく、ありのままの自分で生きていきたい」と。








