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2023年8月23日(水)

きょうの潮流

 ミンミンゼミやアブラゼミがやかましく鳴いています。家の外壁には、数えるとセミの抜け殻が20個近くも。地面には人差し指が入るくらいの円い穴がいくつも開いています。地中で成長したセミの終齢幼虫が地上にはい出す脱出口です▼フランスの昆虫学者ファーブルは穴の周りに盛り土がないことの謎解きを「昆虫記」に書いています。観察と巧妙な実験から、穴の中で幼虫は小便をまき、土を湿らせ泥にして、漆喰(しっくい)のように壁に押し付けていると。穴から現れる幼虫が泥だらけなのもそのせいだと説明しています▼今年はファーブル生誕200年です。生涯をかけて「昆虫記」全10巻を著しました。原題とは違う「昆虫記」という訳は、無政府主義者の大杉栄による命名だといいます(『ファーブル昆虫記 誰も知らなかった楽しみ方』)▼大杉は第1巻を1922年に翻訳しています。「訳者の序」に、動物の糞(ふん)を食物とする糞虫の生活が描かれたファーブルの英訳書を獄中で読んだ感想を書いています。「其の徹底的糞虫さ加減!」等々と▼ファーブルに関するさまざまな批評家の言葉も紹介し“哲学者のように考え、美術家のように見、そして詩人のように感じ、かつ書く”といった批評家の言葉が「一番気に入った」。そして、続巻翻訳の計画を記しました▼しかし、それはかないませんでした。翌年の関東大震災の混乱に乗じ、大杉は妻の伊藤野枝、幼い甥(おい)とともに憲兵に殺害されたからです。いまも読み継がれる本をめぐる歴史です。


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