2023年8月16日(水)
主張
高額な役員報酬
格差・貧困をただす政治が急務
上場企業の2023年3月期(22年度)決算で1億円以上の報酬を得た役員が大幅に増えました。民間信用調査会社、東京商工リサーチのまとめで、会社数、人数とも開示が始まった10年3月期以来、最多となりました。コロナ危機からの業績回復で大企業は大幅に利益を増やしています。高額な役員報酬が増える一方、賃上げは急激な物価高に追いつきません。格差と貧困を正す政治の実現が急務です。
従業員給与の百倍以上も
1億円以上の役員報酬は有価証券報告書での開示が内閣府令によって義務づけられています。東京商工リサーチによると、23年3月期決算で6月末までに有価証券報告書を提出した上場企業2342社のうち、1億円以上の役員報酬は316社、717人でした。前年より27社、50人増えました。10億円以上の報酬は7人でした。
開示した企業の数が300社を超えたのは初めてです。
「コロナ禍から経済活動が本格的に動き出し、円安も追い風となり、輸出企業を中心とした好業績を反映した」と分析しています。
報酬1億円以上の役員数が上位だった日立製作所(20人)、伊藤忠商事(14人)、三菱重工業(10人)は、いずれも円安の恩恵を受けた輸出企業や商社です。
報酬が上位の役員は従業員の年間平均給与の100倍以上を受け取っています。
報酬最高額はソフトバンクグループの子会社であるZホールディングスの慎ジュンホ代表取締役の48億6700万円でした。同社従業員の平均給与の533倍です。次いで高額だったソニーグループの吉田憲一郎会長CEO(最高経営責任者)は20億8300万円で従業員平均給与の189倍です。
各社で働く非正規労働者を含めれば格差はさらに広がります。
大企業役員の報酬が高額化する一方、全国の労働者の実質賃金は直近の6月まで15カ月連続で前年を下回っています。最低賃金は全国加重平均で時給1000円を超える中央最賃審議会の答申が出されましたが、物価高の中の生活には、まったく足りません。
アベノミクスのもとで増えた内部留保に課税して大企業に賃上げを促すとともに、税収を財源に中小企業の賃上げを支援するという日本共産党の提案がますます重要です。
業績連動型の報酬に加え、株式による報酬が増えていることも高額化の要因です。報酬の6~7割以上をストックオプションなどの株式報酬が占めている役員は少なくありません。
応能負担を税制の原則に
ストックオプションは自社株を一定期間、あらかじめ定められた価格で購入できる権利です。株価が上がるほど、市場で売却すれば値上がり益を得ることができるので、ストックオプションを与えられた役員は株価上昇に懸命となります。
株式市場に日銀が大量のマネーを投入して株価を上げる「異次元の金融緩和」政策が大企業役員の報酬を上げる役割を果たしています。株取引で得た高額の利益に課する税率を引き上げることは格差を正す上で重要です。
富裕層や大企業に、能力に応じて負担を求める「応能負担の原則」による税制改革が重要です。








