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2023年8月15日(火)

きょうの潮流

 その木は焼け跡に立っていました。大地に根をひろげ200年以上も生き続け、うっそうと葉が茂る。いくつもの幹や枝が絡みあい、空へとのびていました▼沖縄の伊江島でニーバンガズィマールと呼ばれる、ガジュマルの木です。78年前の沖縄戦をたたかった日本兵2人が、敗戦を知らずに2年間も身を隠した大木としても知られてきました▼島民のほぼ半数が命を落とした地上戦。それを物語る木には戦後多くの人びとが訪れ、平和学習の場にもなってきました。生き延びた兵士の体験は児童文学作家の真鍋和子さんが『ぬちどぅたから』にまとめ、井上ひさしさんが劇化を願った「木の上の軍隊」という演劇にも▼不戦の象徴となってきたそのガジュマルが先の台風で倒れてしまいました。管理してきた宮城孝雄さんは「ショックだったが、なんとか復活させたい」と。根は残っていて関係者や村は専門家と相談しながら復元したいといいます▼「どんなことがあっても、もう二度と戦争は起こさないでください。人間にとって、これ以上の不愉快、不幸はないという、あらゆることを体験しましたから…」。樹上でくらした佐次田秀順(さしだ・しゅうじゅん)さんの言葉を真鍋さんが伝えています▼いまも伊江島をはじめ沖縄には米軍基地が居座り、米国の対中軍事戦略の最前線とされています。政権の中枢を担う人物が台湾にたたかう覚悟を迫る異常さも。佐次田さんは木から降りても平和を求め続けました。命を救ってくれたガジュマルに誓った終戦の思いを胸に。


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