2023年8月12日(土)
きょうの潮流
いま大阪で懸念されていること。「空飛ぶ車」ならぬ「空飛ぶパビリオンにならないか」▼2025年4月から10月まで大阪市此花区・夢洲(ゆめしま)で開催が予定されている大阪・関西万博。人手不足、資材高騰、残業規制の強化などでパビリオンの建設が遅れ開幕に黄信号がともっています。自前で建てる60カ国のうち建設業者が決まっているのは6カ国にすぎません▼開幕に間に合わせるためさまざまな案が取りざたされています。そのひとつがパビリオンを「プレハブ工法」にする案です。工期も短く建設費も安くなるというわけです。「大丈夫なのか」と不安の声が一気にあがりました。思いだされるのは18年の台風21号▼強風で夢洲の積み上げられたコンテナが飛び散乱しました。近くの咲洲(さきしま)の駐車場では多くの車が舞いあがり横転。取材した記者にコンテナ関係者は「あの重いコンテナが」と絶句し車の持ち主は「笑うしかない」とあぜん。夢洲がいかに災害に弱いかを印象付けました▼なかでも怒りを呼んでいるのは残業規制の緩和です。日本国際博覧会協会が、政府に対し時間外労働の上限規制を万博工事に適用しないよう要望したと報じられました。20年東京オリンピック・パラリンピックでも新国立競技場の建設工事の遅れを取り戻すために作業員が過酷な長時間労働を強いられ、過労死や過労自死の被害が起きました▼大阪万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」のはず。いのちと人権を軽んじる姿勢は、開催理念にも反します。








