2023年8月8日(火)
患者負担割合の登録誤り
保険証廃止なら闇から闇
是正されない危険
マイナンバーカードと健康保険証を一体にした「マイナ保険証」のトラブルが後をたちません。本紙既報のように千葉市国民健康保険の被保険者の負担割合がオンライン資格確認に誤登録されていたのをはじめ、全国各地の医療機関の窓口では、健康保険証に記載された窓口負担と、マイナンバーカードで示されるオンライン資格確認の窓口負担が食い違う問題が起こっています。さらに今回本紙の取材により、いまのように健康保険証とオンライン資格確認の“併用”であれば、発見・訂正が可能な登録の誤りが、健康保険証が完全に廃止されれば、制度上、是正されなくなってくる危険性が明らかになりました。(内藤真己子)
![]() (写真)一部負担割合が記された千葉市の国民健康保険証 |
オンライン資格確認システムには負担割合だけでなく、所得により区分される1カ月の自己負担限度額も登録されています。誤登録された場合、自己負担額が20万円以上食い違うケースも起こりえます。国民皆保険制度の根幹に関わります。
保険医療の値段は診療報酬によって決められ、患者の窓口負担以外の部分は、医療機関が各保険者に請求して支払いを受けます。
70歳以上の窓口負担は1~3割で、国民健康保険や後期高齢者医療制度など、自治体が運営する医療保険では年齢や所得に基づいて市町村が認定します。
市町村から集めた保険財政をプールしている都道府県国民健康保険連合会が、市町村から渡される情報と照らし合わせながら、各医療機関の請求の適格性を審査・確認することになっています。たとえば、市町村が「2割負担」の保険証を発行している人から、医療機関が「3割負担」をとってしまった場合は、国保連で齟齬(そご)が分かり、市町村が元データと突き合わせて訂正することができました。
ところが本紙の国民健康保険中央会への取材で、市町村から都道府県国保連に渡される患者の資格情報と、マイナ保険証とオンライン資格確認の導入で医療機関が使う資格情報が同じであることが明らかになりました。保険証がなければ、千葉市のようにオンライン資格確認システムに誤った負担割合が登録されていても、診療報酬支払にともなう国保連の審査・確認作業では発見できません。国保中央会によると約8割の市町村が国保連に資格確認を委託しています。
マイナ保険証への一本化
撤回しかない
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本紙報道をきっかけに千葉市は直近で7件の窓口負担割合の誤登録を認めました。同市によると、市の元の情報を都道府県国保連合会のシステム(国保情報集約システム)に送り、同システムに登録される段階で誤りが起きています。これら負担割合や高額療養費の負担限度額などの情報は、国保連合会のシステムを経由し、オンライン資格確認システムに登録されます。(図)
誤った情報が都道府県国保連に登録され、それに基づいて国保連が診療報酬を審査、資格情報を確認するのでは誤りは発見されないことになってしまいます。
マイナンバーカード保険証には負担割合の記載がありません。現在は、従来の健康保険証と、マイナ保険証(オンライン資格確認)が“併用”され、窓口負担割合などが、健康保険証の記載と違うことに患者や医療機関側が気づき、市町村の“元データ”に照会するなどで是正がされています。ところが今後、岸田政権が進めるように、マイナ保険証一本となり、健康保険証が完全廃止されれば、診療報酬の審査・資格確認の過程も含め、どこからも誤りが正されない状態になってしまいます。
保険証に記載された負担割合とオンライン資格確認に齟齬(そご)があることは、全国保険医団体連合会調査では17都府県で57件報告されています。ほかに各保険医協会の調査で神奈川県で87件、千葉県で56件、大阪府で10件明らかになっています。大阪府では「負担限度額認定の誤り」も10件ありました。
いずれも誤登録の可能性がありますが、保険証が完全廃止されれば正すすべもありません。岸田政権は保険証廃止に固執する姿勢を撤回するべきです。










