2023年8月3日(木)
「プーク」と「ソフィア」協演へ 異文化「共生」の人形劇
「カモメに飛ぶことを教えたドラ猫の物語」
日本とブルガリア 違い楽しむ
重油まみれのカモメが命をかけ産んだ卵。命を託されたドラ猫たちが、ひな鳥に飛ぶことを教えるため奮闘する―種族を超えた信頼の人形劇「カモメに飛ぶことを教えたドラ猫の物語」を、日本の「人形劇団プーク」とブルガリアの「ソフィア人形劇場」が協演します。互いの母語で練習し、掛け合い、生まれるものは。(林直子)
![]() (写真)「カモメに飛ぶことを教えたドラ猫の物語」の一場面 |
暗い舞台の上、スポットライトに照らされた、青、オレンジ、緑の猫。体は1本の長いチューブで、顔はお面です。配管用チューブを着色した体は柔らかく、予想外に動くのが楽しい。ある猫がブルガリア語で話せば、別の猫は日本語で返します。字幕が付きますが、読まなくてもストーリーを追えます。
物語を彩る生演奏。クラリネット、打楽器のコンガとカホン、それに声を組み合わせ、不思議な音色を奏でるのは、ブルガリアの国民的音楽家、ストヤン・ロヤノフさんです。
60年以上交流
![]() (写真)演出のカティア・ペトロヴァさん |
「ダァ、ダァ」(ブルガリア語で“はい”の意)、「もう1回お願い」。東京・新宿区のプーク人形劇団の稽古場では、ブルガリア語と日本語が入り乱れます。
演出のカティア・ペトロヴァさんがブルガリア語で指示し、通訳者が日本語に訳します。猫がひなを名付けるシーン。「叫ばなくてもいい。一番美しい名前を考えて、仲間に迎える大切なところ。別の方法で表現して」
フォルトゥナータ(幸運な者の意)、フォルトゥナータ…。休憩中、猫役の俳優が、大切そうにひなの名前を繰り返し呼びます。
1929年に創立し、日本で最も長い歴史をもつ現代人形劇団プーク。ブルガリア人形劇界で中心的役割を果たす「ソフィア人形劇場」とは、60年以上交流してきました。「カモメ―」共同公演は18年以来、2度目。「共生の物語を、ブルガリアと日本の俳優が演じたら面白い」と思い付いたのがきっかけです。
大変な試みでは? カティアさんは「共に芸術をつくる情熱があれば、言葉の違いは問題ではない」と話します。「むしろ異なる文化の出合いが美しい。一緒にいることを楽しみ、互いを思いやる豊かさ。違うのに同じ生き物であることに喜びがあります」
カオスな現場
練習は最終調整の段階に。「中央の猫の顔だけもう少し明るく」。カティアさんの指示で照明が追加され、スタッフが脚立に昇り、角度を整えます。
舞台袖が狭く、装置の転換に時間がかかることが分かりました。俳優とカティアさんが相談し、1フレーズ長くダンスすることに。演奏、楽器ごとの音響、照明のタイミング、全てが変わります。
「カオスな現場」と話す俳優の小原美紗さん。「相手のことを分かったつもりで、誤解しているかもしれない。話をよく聞くようにしています」
いい舞台を共につくる。時間をかけすり合わせ、違いを楽しみます。
公演情報
- プーク人形劇場(東京・南新宿)は満席
- 8日(火)午後7時・9日(水)午後1時30分=人形劇場とらまる座(香川県東かがわ市)
- 11日(金)午後2時、パティオ池鯉鮒(愛知県知立市)
- 14日(月)午後6時・15日(火)午後2時=愛知県芸術劇場(名古屋市)










