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2023年8月3日(木)

主張

日銀の議事録公表

金融政策の正常化に転換せよ

 日本銀行が2013年4月4日に「異次元の金融緩和」の導入を決めた金融政策決定会合の議事録が公表されました。「2年程度で2%の物価上昇」を達成し経済に好循環をもたらす、というのが決定事項です。導入は9人のメンバーの全員一致でした。しかし実現可能かどうか、肝心な点に疑問が出ていたことが議事録で分かりました。懸念は的中し、財政・金融を大きくゆがめてしまいました。日銀は「物価の安定」という本来の使命に立ち返るべきです。

「ギャンブル性」の懸念

 金融政策決定会合の議事録は、10年経過後、半年ごとに公表する規定です。今回公表されたのは13年1~6月の会合です。

 12年12月に就任した安倍晋三首相が大規模な金融緩和を日銀に求め、抵抗した白川方明(まさあき)総裁を任期満了前の退任に追い込みました。代わって就任した黒田東彦(はるひこ)総裁のもとで初めて開かれたのが13年4月3~4日の会合です。

 黒田総裁は「量・質ともにこれまでと次元の違う金融緩和を行う必要がある」として、2%の物価上昇を2年程度で実現するために「できることは全てやる」と提起しました。

 日銀執行部が示したのは長期国債を大量に購入し、金融市場のマネーを年間60兆~70兆円増やす方針でした。日銀が保有できる長期国債は、それまでは日銀が発行したお札の流通残高以下に制限してきました。このルールを停止し、際限ない国債購入を可能にしました。株式上場投資信託の購入を拡大し、株式市場にマネーを投入する方針も出されました。

 会合メンバーである正副総裁と審議委員6人の全員が賛成しましたが、疑問も出されました。

 佐藤健裕審議委員は、マネーの量を調節することでインフレ率を中央銀行が操れるかのような考え方には「重大な誤解がある」として「ギャンブル性の強い政策となることは覚悟すべきであろう」と主張しました。

 木内登英審議委員は「達成には非常に大きな不確実性がある」とし、達成期限を設けることに反対しました。大規模緩和を長期に続ければ、金融市場に不安定をもたらすとし、効果がなければ別の政策を考えるべきだと述べました。

 結局、異次元緩和は2年どころか10年以上続いています。「2%の物価上昇」実現に向けた政策もマイナス金利の導入など異常な手段を重ねています。

 そのほかの委員を含めて共通して出たのが、巨額の国債購入が「財政ファイナンス」(政府の財政赤字の穴埋め)と受け止められないかという懸念でした。

異次元緩和の破綻は明白

 「戦力の逐次投入は避け、目標をできるだけ早期に実現する」(黒田総裁)と、日銀は巨額の国債購入に踏み切りましたが、購入額は膨らみ、今や国の借金の半分を日銀が穴埋めしています。

 今日、物価上昇率は3%を超え、国民を苦しめています。にもかかわらず、黒田氏の退任後も日銀は2%の物価上昇の「持続的・安定的な実現」が必要だとして異次元緩和を続けています。

 金融政策頼みで賃上げや経済の回復を実現できないことは明白です。岸田文雄政権と日銀は破綻を認め、金融政策の正常化に踏み出さなければなりません。


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