2023年7月30日(日)
主張
健康保険証
廃止方針は撤回するしかない
2024年秋に健康保険証を廃止しマイナンバーカードに一体化する政府方針の撤回や延期を求める声は各種世論調査で7割を超えています。参院地方創生デジタル特別委員会で26日に行われた閉会中審査で、担当の河野太郎デジタル相は「国民の不安を払拭するための措置を行うということで変わりはない」と世論に背を向けました。首相は廃止の延期について「関係者の意見を聴き、対応を考えていきたい」(28日)と述べました。医療現場の声は保険証存続です。廃止の方針を撤回するしかありません。
固執するほど広がる混乱
閉会中審査では、マイナカードを使ってオンラインで保険資格を確認する仕組みの利用率がいまだに6%前後にすぎないことも厚生労働省の答弁で明らかになりました。90%以上がマイナカードでなく保険証で受診していることになります。国民の不信がいかに強いか、はっきり示されました。
オンラインで保険資格が確認できない、医療費の負担割合が誤登録、子どもの医療費助成が使えない―と混乱は底なしです。どれも保険証があれば起きないトラブルです。
医療機関の職員と患者はそのつど煩雑な対応を余儀なくされ、保険診療を妨げられています。無保険扱いとせざるをえず、患者に10割の医療費を請求したケースも続出しています。
保険証の存続を求める署名運動は各地で進み、市民が列をなして署名するところもあります。
政府は、マイナカードを持たない人のために健康保険の資格確認書を発行するとしています。本人の申請なしでも発行する方式が検討されています。それならば保険加入者全員に送られる保険証を存続すればいいだけのことです。保険証を廃止し、多額の費用と手間をかけて資格確認書を発行する必要性はありません。
政府は「総点検」に乗り出していますが「秋まで」とする無理な期限設定が、作業に当たる地方自治体の職員に過重な負担を強いています。マイナカードの発行数は9000万を超え、ひも付けられた29分野の個人情報は数十億項目になります。短期間で点検を終えられるような数ではありません。
保険証廃止に固執する限り混乱の拡大は避けられません。マイナカードの運用をいったん停止し、完全・確実な総点検を行うことが必要です。
岸田政権が6月に発表した「デジタル重点計画」は、マイナカードに一体化する対象を運転免許証、母子手帳、介護保険証などに広げることを掲げました。健康保険証の一体化すら破綻状態なのに、まったく反省がありません。
金もうけ優先をやめよ
マイナカードを全国民に持たせるために保険診療を人質にとったことが混乱の根源です。
保険証との一体化は、大企業・財界の要望です。経団連は20年の「新成長戦略」で保険証、運転免許証などの公的証明書だけでなく診察券や学生証までマイナカードに一体化することを求めました。多様なひも付けで集まった個人情報を新たなビジネスに活用しようとしています。
個人情報保護は人権の問題です。金もうけ最優先の誤った方針はやめるべきです。








