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2023年7月27日(木)

主張

MV22墜落報告書

欠陥機は飛行を停止し撤去を

 米海兵隊は、昨年6月8日に米カリフォルニア州で発生した垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの墜落事故について、同機に特有の機械的故障が原因だったとする調査報告書を公表しました(今月21日)。事故では5人の乗組員全員が死亡しています。防衛省は今回の報告書を受け、陸上自衛隊が保有するV22オスプレイの飛行を見合わせています。同機の構造的な欠陥は明らかです。

根本原因は不明のまま

 報告書によると、事故はエンジンと回転翼をつなぐクラッチが一時的に外れ、再びつながる時に衝撃が発生する「ハード・クラッチ・エンゲージメント」(HCE)という現象が原因としています。

 オスプレイは、左右の回転翼にそれぞれエンジンが付いています。片方のエンジンが故障しても、もう一方のエンジンだけで両方の回転翼を回すことができる「インターコネクト・ドライブ・システム(ICDS)」という仕組みがあります。ところが、HCEは、駆動システムに深刻な損傷を与える可能性があります。今回の事故では、HCEの発生により片方のエンジンとICDSが故障し、推力が失われて墜落しました。

 報告書公表に際しての米海兵隊の報道発表は、事故の原因を「破局的で予期しない機械的故障」と明記しました。報告書も、事故が操縦ミスや整備不良といった人的要因や、天候などの外的要因によって発生したのではないと指摘しています。事故がオスプレイの構造上の問題として起きたことを事実上認めるものです。

 オスプレイのHCEは、米空軍が昨年8月、特殊作戦用のCV22で立て続けに起こっているとし、全機を地上待機にしたことで知られるようになりました。同年9月にCV22は飛行を再開しましたが、今年2月には海兵隊、空軍、海軍が保有するオスプレイについて、HCEの発生を予防するため、一定の飛行時間を超えたクラッチ関連部品の交換を指示しています。

 前出の米海兵隊の報道発表は、一定の飛行時間を超えたクラッチ関連部品を交換することで「HCEの発生率を99%大幅に削減する」としています。しかし、報告書は「HCEの根本的な原因は不明なまま」で「分析が続いている」としており、発生の危険がなくなったわけではありません。

 日本では、米海兵隊のMV22が沖縄県の普天間基地(宜野湾市)に、米空軍のCV22が東京都の横田基地(福生市など5市1町)に配備され、飛行範囲は全国各地に及んでいます。陸上自衛隊のV22も千葉県の木更津駐屯地(木更津市)に暫定配備され、佐賀空港への移転が狙われています。

低空飛行の危険さらに

 日米両政府は今月7日、米海兵隊のMV22が日本本土の山岳地帯で低空飛行訓練を行う際の最低高度を現行の約150メートルから約60メートルに引き下げることで合意しました。人口密集地以外の「最低安全高度」を150メートルとする日本の航空法をあからさまに破るものです。

 いつまたHCEが起こり制御不能になるか分からない状態の下で、人口密集地上空の飛行はもちろん、「最低安全高度」を下回る低空飛行訓練が繰り広げられることがどれほど危険か。欠陥機は直ちに飛行を停止し、撤去すべきです。


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