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2023年7月26日(水)

主張

やまゆり園事件

優生思想を許さぬ取り組みを

 相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者19人が殺害され、職員を含む26人が重軽傷を負った事件からきょうで7年です。事件が衝撃を広げたのは、実行犯の元施設職員・植松聖死刑囚が「障害者には生きる価値がない」と許し難い姿勢に固執していたことです。障害者への差別と偏見が横行する風潮の中で起こされた事件を深刻に受け止める指摘が相次ぎました。いまも障害者の人権や尊厳が保障されている社会とは言えません。少数者に対する差別的言動も繰り返されています。事件が突き付けた重い課題と向き合い続ける必要があります。

国連の委員会からの勧告

 「優生思想および非障害者優先主義に基づく考え方に対処する観点から、津久井やまゆり園事件を見直し、社会におけるこうした考え方の助長に対する法的責任を確保すること」

 昨年9月、国連の障害者権利委員会が日本政府に対して行った総括所見(勧告)の一節です。

 障害者の尊厳を尊重し、障害のない人と同等の社会参加の実現をめざす障害者権利条約を日本は2014年に批准しました。障害者権利委員会は昨年夏、この条約に沿った日本の障害者施策の進捗(しんちょく)状況を初めて対面によって審査しました。9月の勧告は、その審査を踏まえて出されました。日本政府の姿勢、社会のあり方、障害者をめぐる多くの課題を国際水準に照らしてただす内容です。この中で、やまゆり園事件に触れ、日本政府による「包括的な対応がなされていない」ことを障害者施策の立ち遅れの一つだとして懸念を示し、是正を求める勧告をしたことは注目されます。

 優生思想は、命に優劣をつけて“劣った命”は排除されても構わないとする誤った考えです。日本政府は権利委員会の勧告を受け止め、やまゆり園事件を政府として検証し、優生思想や障害者を差別する考えを社会から除去する取り組みを強めるために責任を果たさなければなりません。

 勧告は、障害者に不妊手術を強制した旧優生保護法(1948~96年)をめぐる対応についても懸念し、被害者の補償制度の見直しも求めています。旧優生保護法下での不妊手術は約2万5千人が受けたとされ、国策による戦後最大の人権侵害です。同法によって、国として優生思想を公認し、障害者に対する差別や偏見を固定化し助長してきました。

 今年6月、衆院と参院の調査室は、旧優生保護法下での不妊手術についての調査報告書を公表しました。報告書は、説明のないままに不妊手術を強いられた実態を改めて浮き彫りにしています。不妊治療の被害者が国に賠償を求める裁判では違憲・違法性を認め国に賠償を求める判断も出ています。国は一刻も早く被害者を幅広く救済する立場に立つべきです。

人権と尊厳を守る社会へ

 東京都八王子市の精神科病院「滝山病院」で看護師が入院患者に対して暴行を繰り返し逮捕される事件も発生しました。人権と尊厳が踏みにじられる事態が続いていることは重大です。

 優生思想で障害者を選別し、排除する社会をただす取り組みを強めることが欠かせません。全ての人の権利と尊厳が守られる社会の実現へ力を合わせましょう。


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