2023年7月22日(土)
マイナンバー 個人情報漏れ全国で
個情委は全容解明を
マイナンバーをめぐるトラブルが相次ぐなか、政府の個人情報保護委員会(丹野美絵子委員長)が19日、マイナンバー法に基づきデジタル庁へ立ち入り検査に入りました。国の機関に立ち入り検査を行うことは同委員会発足以来2度目で、極めて異例です。
同委員会は、個人情報保護法とマイナンバー法に基づき、個人情報と特定個人情報(マイナンバー関連)の保護について監視・監督や相談・苦情あっせんなどに取り組んでいます。2016年1月、独立性の高い機関として設置されました。
個人情報の漏えいはすでに「可能性」の問題ではなく、現在進行形で起きています。例えば、宮崎市と鳥取市では今月に入って障害者手帳のひも付けの誤りが判明し、全国の自治体で点検が進めば、さらに被害は広がる恐れもあります。
河野太郎デジタル相は、マイナンバーカードを取得した個人に対して、政府が運用する「マイナポータル」で情報が正しいかどうか自分で確認するよう呼び掛けました。何らかの情報でひも付けの誤りがあれば、利用者は他人の個人情報を見てしまいます。今まさに、こうした個人情報の漏えいが全国で起きています。
国はマイナンバーのシステムをいったん停止し、データの総点検を行うべきです。そのうえで、同委員会がこうしたずさんな制度設計やシステム管理がなぜ行われたのか、根本問題に切り込むべきです。
今回の立ち入り検査は、国や自治体が給付金などを振り込む「公金受取口座」を対象としています。同口座では、自治体の支援窓口での共用端末の操作ミスで、本人名義とは異なる口座が誤登録された事案が6日までに940件ありました。デジタル庁では、原因となった共用端末の改修を行い、今後は同じ誤登録は起きないとしています。しかし、埼玉県所沢市で共用端末とは関係ない人為ミスで、別人の口座にお金を振り込むミスが発生しています。
さらに、これら以外にも家族名義と推測される口座が登録されている事案が14万件にも及びます。同庁は一つひとつのデータを調べたわけではなく、名字が同じなどの理由で「家族名義ではないか」と推測しているだけです。しかも、「誤登録に至った詳細が明らかでない」とし、いまだに精査中です。
こんなずさんな調査で、同庁が再発防止策を立案し、実行したとしても、底の抜けたバケツに水を入れるようなものです。国民のマイナンバー制度に対する不信・不安は日に日に増しています。個人情報保護委員会は、組織理念に「人と社会の信頼の基礎を築くために」を掲げています。その理念に見あった徹底した全容解明が求められます。(森糸信)








