2023年7月17日(月)
主張
米核戦力「可視」化
あからさまな核の脅し許すな
米軍が、日本などを足場に核戦力を見せつけ、中国や北朝鮮を威嚇する危険な動きを始めています。岸田文雄政権は米国の核戦略を全面的に支持し、被爆国政府にあるまじき姿勢をあらわにしています。北朝鮮が弾道ミサイル発射を繰り返し、中国が核弾頭数を増やすなど核戦力の増強を図っていることは許されません。しかし、「抑止力」の強化を口実に核の威嚇でこれに対抗すれば核軍拡の悪循環をさらに加速するだけです。
弾道ミサイル原潜公然と
米海兵隊は5月、CH53E大型輸送ヘリ2機がフィリピン海で米海軍のオハイオ級弾道ミサイル原潜メインに補給したことを報道発表(同月18日付)しました。同原潜は最大20発の核弾道ミサイル・トライデントIID5を搭載しているとされます。核ミサイル搭載原潜の行動は極秘にもかかわらず、今回の発表は異例でした。
本紙日曜版(7月16日号)によると、補給は米海兵隊普天間基地(沖縄県宜野湾市)に配備されたCH53Eヘリが5月9日に行いました。沖縄駐留の海兵隊航空部隊による同原潜への補給は初めてでした。海兵隊の報道発表は、原潜メインの艦長が「(今回のような補給は)米本土に被害を与えようと望むどんな敵にも絶えず圧力をかけ続けることを可能にする」と述べたことを紹介しています。
また、米空軍嘉手納基地(沖縄県嘉手納町など)に4月から配備されているF15E戦闘機が、2021年秋に米本土で核爆弾の投下試験を行っていたことも分かっています(本紙5月18日付)。同機は核・非核両用能力を持ち、B61核爆弾を搭載可能です。試験ではB61の模擬弾を投下しています。
この他、米空軍のB52戦略爆撃機が昨年後半から今年にかけて、日本海や東シナ海の上空、沖縄周辺空域で、航空自衛隊の戦闘機と共同訓練を頻繁に行っています。B52は、核巡航ミサイルAGM86Bを搭載できます。
バイデン米政権は昨年10月に公表した核戦略の基本方針「核態勢の見直し」で「インド太平洋地域での強力で信頼できる核抑止」を打ち出しました。そこでは、戦略爆撃機や核・非核両用戦闘機の前方配備や弾道ミサイル原潜の寄港などを挙げ、「われわれは同盟国や友好国と協力し、この地域における米国の戦略アセット(注・潜水艦や航空機など)の可視性を増大させる機会を特定する」と強調しています。核戦力を一層、公然と見せつけるということです。
岸田政権が昨年末に閣議決定した安保3文書は「核抑止力を中心とした米国の拡大抑止が信頼でき、強靱(きょうじん)なものであり続けることを確保するため、日米間の協議を一層活発化・深化させる」としています。今年6月の日米拡大抑止協議では、米側が「米国の戦略アセットの可視性を増大させる」と改めて表明しています。
世論に背く政治の転換を
「核抑止」とは、核兵器の使用を前提にし、広島・長崎のような非人道的惨禍を引き起こすことをためらわない議論です。核戦力の「可視性」の増大とは、核による脅しを強めるということに他なりません。核廃絶を求める国内外の世論に真っ向から背くものです。
米核戦略に付き従い、「核抑止力」論に固執する日本の政治の転換が必要です。








