2023年7月14日(金)
きょうの潮流
子ども時代から両親にこう言われ育ったと自伝にはありました。「いじめには立ち向かえ」「正しいことをせよ」。後に「モノ言う選手」と評される根っこがここにあります▼サッカー女子米国代表のミーガン・ラピノー選手(38)。20日開幕のワールドカップ(W杯)を前に今秋の引退を表明しました。足跡はフィールドを超え広がります。2012年ロンドン五輪、2度のW杯を制覇。19年W杯はフォワードとして得点王と最優秀選手に輝きます▼このとき米国代表は、「もう一つのたたかい」を挑んでいました。男女間の格差是正です。優勝後、スタジアムからは「平等な報酬を」という後押しのコールが何度も響きました。当時のW杯賞金総額は男子の約8%だけで、選手は代表の男女同一報酬を求め、米国連盟を提訴していたからです▼たたかいは足かけ10年余り。何度もはね返されつつ、その度に励まし合い、戦略を立て、任務を分担し、粘り強くたたかう。いつもその中心でした。昨年、ようやく平等な報酬の枠組みを勝ち取ります。「勝利とは、ほかの誰かを踏みつけることではなく、他者を支援するために全力を尽くすこと」。これらを経て培った哲学です▼同性愛を公表し、性的少数者の権利を守る活動をし、反人種差別でも先頭に立つ。「人のために立ち上がって。大きな理念や目標のために声を上げて」。その呼びかけは、自身の生き方そのものです▼まだまだ厳しい女子の環境。最後のW杯でどんな勇姿、言葉を残してくれるのか。








